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第1回高槻市景観賞(令和元年度)
第1回高槻市景観賞(令和元年度)
平成30年1月4日から2月28日までの約2か月間にわたって募集を行い、書類選考及び現地調査等の審査、市民投票の結果をもとに、高槻市景観審議会の選考を経て、建造物部門では、27作品を入選とし、その中から8つの受賞作品が選ばれました。また、景観まちづくり活動部門では2つの受賞作品が選ばれました。
※各部門の受賞作品と市民賞の表彰作品を紹介する作品集については、都市づくり推進課の窓口等で配布しています。
なお、市民投票の結果については、下記ページをご覧ください
建造物部門受賞の銘板
景観まちづくり活動部門受賞の盾
総評
高槻市景観賞選考部会委員長 久 隆浩
審査は、平成30年5月に、応募された建造物部門32件、景観まちづくり活動部門9件の中から書類審査による1次審査によって建造物部門27件、景観まちづくり活動部門2件を選び、建造物については令和元年8月に現地審査による2次審査を行った。足掛け2年の審査になったのは、平成30年6月18日に発生した大阪府北部地震により、審査物件のうち歴史的建造物を中心に被害を受けたためである。令和元年の現地調査では1年を経過しているにも関わらずまだ修復ができていない建物も存在し、被害の大きさを感じたところである。とくに歴史的建造物は修復に莫大な費用がかかり、景観を維持していくための所有者の負担の大きさを実感した。こうした費用を市民が支援するための基金制度なども必要かもしれない。
さて、2次審査の結果、建造物部門では8件を景観賞に選定した。8件の内訳は、富田寺内町にある本照寺、清鶴酒造、壽酒造、高槻城下町にある横山家住宅、郡家住宅、西国街道沿いの久保家住宅、城下町の町家をリノベーションしたシェアアトリエ福寿舎、そして現代建築としての日吉幼稚園である。今回は奇しくも7件が歴史的建造物となった。これらはいずれも高槻の歴史的景観を先導してきた建造物であり、長い年月をかけて所有者が維持管理を行ってきた賜物である。富田寺内町、高槻城下町、そして西国街道芥川宿という高槻のまちを形成してきた3つの地区の代表的な建造物がそれぞれ景観賞に選ばれたのは喜ばしいことである。3つの地区には数多くの歴史的建造物があったが、近代化の波、そして維持管理の大変さからたくさんの建造物が消失してしまった。今回賞に選ばれた建造物だけでなく、現在残っている歴史的建造物がひとつでも多く継承されることを望んでいる。また、今回唯一現代建築として選ばれた日吉幼稚園も、手間暇をかけたデザインとなっており、これから月日を重ねていってやがては歴史的建造物と呼ばれる日が来ることを期待している。また、次回は現代建築からもより多くの景観賞が選ばれるよう、まちなみに配慮した建築物が増えていくことを期待する。
市民の手による景観づくりは、時間、そして手間のかかる活動であり、景観まちづくり活動部門に応募されたものすべてに賞を差し上げたいところではあるが、今回はその中でも景観づくりにより貢献している2件を景観賞に選定させて頂いた。建造物と同様にこれからもより多くの景観まちづくり活動が行われ、市民ぐるみの景観づくりが進んでいくことを期待したい。
建造物部門
入選作品
(応募順・敬称略)
(1)横山家住宅(横山医院)、(2)郡家住宅、(3)竹田家住宅、(4)藪家住宅、(5)三宅家住宅、
(6)久保家住宅、(7)平野屋町家、(8)田淵家住宅、(9)坂田家住宅、(10)辻田家住宅、
(11)壽酒造、(12)清鶴酒造、(13)山口医院、(14)石河診療所、
(15)スマイルプランさくら歯科クリニック、(16)十月桜の家、
(17)ホワイトローズイングリッシュスクール、(18)シェアアトリエ福寿舎、
(19)学校法人成城学園 日吉幼稚園、(20)レ・ジェイド高槻、(21)清蓮寺、(22)教行寺、
(23)慶瑞寺、(24)普門寺、(25)三輪神社、(26)本照寺、(27)原公民館
※入選作品の詳細については、下記ページをご覧ください
受賞作品
(応募順・敬称略)
横山家住宅(横山医院)
【写真上】江戸中後期の郷宿遺構で、左の主屋は約300年前、右の隠居棟は明治初期に建築された
【写真左】ろうそくの灯りで建物を照らす
所在地/城北町1丁目
<講評>
旧高槻城下町に位置し、主屋は唯一現存する近世郷宿の遺構である。主屋1階には暗色の出格子が立てられ、2階は大壁造で白く塗込められている。東には明治期に建てられた隠居棟が続く。隠居棟の中央には腕木門が設けられ、柔らかい色合いの塀が敷地を囲い、街並みに変化を与えつつ、調和のとれた景観を構成している。歴史を踏まえて整えられた前面の通りとともに、ここが城下町であったことをリアルに伝えてくれる。
(選考部会委員 橋寺 知子)
郡家住宅
【写真上】現存する数少ない武家屋敷の一つで、長い塀と立派な門構えがさすがの風格
【写真左】長屋付の腕木門
所在地/野見町
<講評>
騒々しい幹線道路から一歩南の街区、城下町特有の丁字路から下ると低層の建物が並び空が開ける。その並びに上部白漆喰、腰竪板張りの塀が40メートルほど続き、中央部には腕木門と長屋が設えてある。ここは往時の高槻城出丸の辺り、武家屋敷が並んでいた。その光景を彷彿とさせるのがこの建物である。背後の主屋であろう建物の甍の趣きも合わせ、郡家住宅は将来にわたって継承されていく文化的景観に寄与する優れた建造物である。
(選考部会委員 安田 演之)
久保家住宅
【写真上】元脇本陣の建物で、甍の連なり、黒い窓枠や腕木と白壁との対比が美しい
【写真左】黒塗り、横長丸形の虫籠窓
所在地/芥川町2丁目
<講評>
西国街道芥川宿には往時をしのばせる街並みが今も残る。その中でも一段と格調高く門戸を構えるのが元脇本陣の久保家住宅である。上部黒漆喰、腰竪板張りの塀を脇に控え玄関と格子戸のある主屋が街道に面する。中二階の白漆喰壁には黒漆喰の虫籠窓が配され、袖には卯建が建つ。外観は極めて良好に維持され、その他の設えも注意深く配され宿場町の面影を今に伝える。貴重な街道景観を次代に継ぐ極めて重要な建物である。
(選考部会委員 安田 演之)
壽酒造
【写真上】主屋の板張りのしつらえと豊かな植栽がまちなみに潤いをもたらしている
【写真左】蔵のある風景
所在地/富田町3丁目
<講評>
酒造りが盛んであった時代を彷彿とさせる町角を形成し、富田独自の景観を継承している。歴史的建造物が今も点在する中で、現役で地域産業も引き継ぐ役割を担っている。板張りの塀の上にのせられた豊かな植栽の手入れも行き届き、白壁と板張りのコントラストも美しい。塀に貼り付けられた古くからの立体サインがアクセントとなり、地域の個性をさらに高めている。室外機、メーターなどの遮蔽が工夫されることで、さらに評価が高まる。
(選考部会委員 藤本 英子)
清鶴酒造
【写真上】黒壁と焼杉、横長丸形の虫籠窓、繊細な格子の意匠などが印象的な光景
【写真左】酒屋のロゴになっている3つの蔵
所在地/富田町6丁目
<講評>
清鶴酒造は江戸期に隆盛を極めた富田酒を今も作り続ける蔵元の一つである。旧来の細い丁字型の街路に面して、南側に繊細な格子と黒壁が印象的な主屋、北側と東側に焼杉壁の蔵があり、複数の建物で構成される貴重な街路景観である。東側の蔵は会社のシンボルマークにもなっている3つ並びの蔵で、妻側が見える北からの景観も印象的である。平成30年の災害により北側の蔵は改修を余儀なくされたが、景観に配慮したものとなっている。
(選考部会委員 橋寺 知子)
シェアアトリエ福寿舎
【写真上】町家のリノベーションにより、城下町の風情を残しながら様々な人が活用
【写真左】昔使われていた紅色を各所に残す
所在地/城北町1丁目
完成年/2015年(改修)
設計者/ミックスラボ
施工者/清水工務店
<講評>
元酢醸造所としてものづくりを支えてきた100年以上の町家が、再びものづくりの人々を支える目的を持って蘇ったリノベーション施設である。高槻の中心部の町並みに、歴史の重みを持って凛と佇む姿は、地域景観の質をその存在だけで高めている。昔の工法、技を引き継ぎ細部の工夫で活かされている。看板、照明、タープなどそれぞれに込めた思いが伝わり、さらに魅力を高めている。掲示のチラシなど小物の整理が進むことを望む。
(選考部会委員 藤本 英子)
学校法人成城学園 日吉幼稚園
【写真上】小高い丘の上に立ち、坂を登っていくと頭上にコの字にかかる園舎が見える
【写真左】擁壁を雛壇状に分節して植樹
所在地/日吉台六番町
完成年/2016年(新築)
設計者/無有建築工房
施工者/藤木工務店
<講評>
閑静な住宅街の中で、小高い丘の上に位置する園舎は、勾配屋根により街のランドマークとなりながら、外壁に木材を使用することで周辺の住宅のまち並みへの調和も図られている。敷地西側の高低差を処理する擁壁は、セットバックさせながら雛壇状に分節し、高さや角度を変化させ、8種類の煉瓦タイルの組み合わせによって多様な素材感も演出され、隙間に植栽された四季折々の花や木々と相まって道ゆく人を楽しませてくれている。
(選考部会委員 加我 宏之)
本照寺
【写真上】1427年に創建されたと伝わる浄土真宗本願寺派のお寺
【写真左】東門と本堂
所在地/富田町4丁目
<講評>
室町時代に創建された本照寺は、江戸時代中期に再建された本堂が本山格の浄土真宗寺院を代表する建造物として平成2年に市の有形文化財に指定され、同時代に建立されたとされる山門・東門・鐘楼も平成17年に市の有形文化財に指定されている。通称「富田御坊」とも呼ばれる本寺は、寺内町を形成していた富田のシンボル、また、本堂の大屋根は地域のランドマークとして、地域住民に親しまれる歴史的街並み資源である。
(選考部会委員 加我 宏之)
「景観まち歩きMAP(マップ)」をご利用ください
「第1回高槻市景観賞の受賞・入選作品と巡るたかつき景観まち歩きMAP」には、受賞または入選された作品がたくさん集まった、西国街道芥川宿・高槻城下町・富田寺内町の3つのまちを紹介しています。街歩きにご利用ください。
景観まちづくり活動部門
受賞作品
(応募順・敬称略)
高槻レンゲ振興会
活動範囲/三島江地区
活動概要/春、一面に広がるレンゲ畑を無料で一般開放。昭和57年より「レンゲまつり」を開催され、様々な催しも行われている。
<講評>
三島江地区に広がる水田風景そのものも美しい景観であるが、とくに春先にレンゲが咲き乱れる風景は、農村風景に彩りを添えている。高槻レンゲ振興会は長い年月をかけてこうした風景をつくりだし、また「レンゲまつり」で地域住民に楽しんでもらう活動を続けている。レンゲの咲く水田は住民に開放され、花摘みなど子どもたちが自然に触れ合う場所にもなっている。
(選考部会委員長 久 隆浩)
(印刷用)高槻レンゲ振興会の作品情報(PDF:992.4KB)
NPO法人 花と緑のまちづくり 高槻景観園芸クラブ
活動範囲/大阪府高槻警察署、JR高槻駅前ほか
活動概要/平成16年よりあまり管理されていなかった駅前の緑地などで花壇づくりに取り組まれ、担い手育成、市民交流等、活動を発展されている。
<講評>
JR高槻駅前のロータリーを始め、道路交差点や歩道など、公共空間を花いっぱいにし、高槻市の顔づくりに貢献してもらっている。また、市との共催で「花と緑のまちづくり講座」を開催し、花育ての仲間を増やし、継続した活動の基盤づくりにも努めている。JR高槻駅のロータリーから始まった花育ての活動は、仲間の広がりとともに活動も広がりを見せ、点から線、そして面への展開となっている。
(選考部会委員長 久 隆浩)