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鵜殿のヨシ原保全の取組

ページID:166134 更新日:2025年12月19日更新 印刷ページ表示

鵜殿のヨシ原保全の取組

「鵜殿のヨシ原」は、本市東部(道鵜町・上牧町周辺)の淀川右岸に約75ヘクタールにわたって広がる、淀川流域随一の広大なヨシの群生地です。

ヨシは、二酸化炭素の吸収や水質の浄化といった環境を保全する重要な役割を担っており、ヨシが群生する水辺は様々な生き物のすみかとなります。
鵜殿のヨシ原は、「大阪の生物多様性ホットスポット」に選定されているほか、「摂津峡」「本山寺と神峰山の森」と並び「大阪みどりの百選」にも選出されている府内有数の貴重な自然環境であり、絶滅危惧種を含む多種多様な生き物が生育しています。
また、ヨシは「よしず」の素材とされるなど古くから人の生活にも密接な関りがあり、特に鵜殿のヨシ原のヨシは、雅楽の篳篥の蘆舌(ろぜつ)の最上級の材料として今も重宝されています。さらに、ヨシの繊維を活用した新しい産業化も進みつつあります。

この地では、戦後の産業の変遷や淀川の治水対策などの影響から、カナムグラやヤブガラシといったつる草などの繁茂によって何度かヨシ原消滅の危機がありましたが、地元住民等が中心となり実施される「ヨシ原焼き」などの保全活動によって、今日に至るまでその環境が維持されてきました。

現在は、コロナ禍に2年連続でヨシ原焼きが中止となった影響でつる草の勢いが増しており、再びヨシ原に危機が訪れていますが、様々な人の手によって、保全に向けた取り組みが進められています。
鵜殿のヨシ原全景

ヨシ原焼き

ヨシ原焼きの様子
例年、2月中旬の午前中(天候により延期の場合あり)に、大字鵜殿から大字上牧までの淀川河川敷で、地元の「鵜殿のヨシ原保存会」及び「上牧実行組合」により、淀川の自然・文化・伝統を守り、害草・害虫を駆除し、不慮の火災の防止すること等を目的に行われます。

つる草抜き

つる草抜きの様子
良質なヨシの生育を阻害する「カナムグラ」などのつる草の駆除が行われています。
令和4年から令和7年までは、雅楽協議会が中心となってボランティア活動として駆除作業が実施されていましたが、今後の安定的な活動に向けた準備が進められています。

ヨシ原の保全に取り組む人々 ヨシ原に寄せる思い

鵜殿のヨシ原保存会 会長 西村守さん

西村守さん
雅楽の篳篥用のほか、よしずなどの原料としても使われてきた鵜殿のヨシ原は、地元道鵜・上牧の人々の生活とともに受け継がれており、この広大なヨシ原を保全するため、関係行政機関などの協力を得てヨシ原焼きを毎年実施しています。
今後も豊かな自然環境や雅楽などの伝統文化を守るため、熱意を持ってヨシ原の保全活動に取り組んでいきます。

上牧実行組合 組合長 木村和男さん

木村和男さん
私が鵜殿のヨシ原で篳篥のリードのヨシを刈取り始めたのは30年前。当時はヨシ群が沢山あり雑草も少なく、良いヨシが沢山収穫できました。
しかし長年刈取りをしていたヨシ群が急に無くなる事態が起こりました。コロナの影響でヨシ原焼きが出来なくなり、つる草が繁茂したようです。
雅楽協議会の鈴木様に、すぐに危機的状況を報告し、このままではヨシが取れなくなり雅楽演奏が出来なくなると、つる草取りに立ち上がっていただきました。
この度、篳篥用ヨシの保全に高槻市、雅楽協会、文化庁、国交省の御協力をいただきましてヨシ原の保全活動をしていただけることになりました。これから安心してヨシを刈り取れることに感謝申し上げます。

鵜殿ヨシ原研究所 所長 小山弘道さん(高槻市緑地環境保全等専門相談員)

小山弘道さん
「鵜殿のヨシ原を遊びませんか?」

鵜殿の堤防を散歩しませんか?
ヨシ、オギ、セイタカヨシ、穂の色は何色?
ヨシ原焼きは人が草原の自然と生き物を未来につないでいます。

初春、広大な鵜殿を散策しませんか?
ヨシの芽生え、トネハナヤスリなどの群落が広がります。

ヨシは湿地性植物、水を淀川からポンプで揚げ水路で鵜殿に流すことが環境を守る要です。
1975年高槻市の依頼を受けヨシの生育や植物、生き物調査などを始めて、1996年から市民が多数参加、活動は観察会や展示会、ヨシ紙、バイオ燃料化と広がりました。1999年雅楽関係者と出会い2000・2004年雅楽演奏会を開催、宮内庁楽部楽師や演奏家、多くの人々に鵜殿のヨシ原を伝えてきました。

雅楽協議会 鈴木治夫さん(2022年よりボランティアなどで篳篥用ヨシを再生)

鈴木治夫さん
平安時代の昔から雅楽の篳篥のリードに最良であると上牧・鵜殿の陸域のヨシが使われてきました。

しかし2021年秋「篳篥用のヨシが全滅」の報を受け「雅楽を後世へ」と翌2022年春からヨシ再生の「つる草抜き」に取組みました。
4年間で参加されたボランティア・アルバイトの方はのべ2500人余、7000平方メートルの広さでヨシを再生できました。

民間のみで継続は難しく2024年9月5日、都倉俊一文化庁長官に東儀秀樹氏と私で面会し現状を訴え、長官から「篳篥用ヨシ再生へ助成する」と返事を頂きました。

今後は国、地元自治体、民間が協働してヨシの再生・保全が行われます。もし2022年から始めていなければ篳篥用のヨシは壊滅していたと思うと愕然とします。

一般社団法人ヨシオープンイノベーション協議会 代表理事 塩田真由美さん

塩田真由美さん
一般社団法人ヨシオープンイノベーション協議会は、鵜殿のヨシ原保全に取り組み、事業者が連携してヨシを利活用するサステナブルな仕組みづくりを進めてきました。

地域資源であるヨシを製品やサービスへと活かすことで、環境保全と事業性を両立させることを目指しています。

2024年3月の卒業式から上牧小学校と五領小学校に、今年からは、加えて五領中学校の卒業証書に、ヨシ紙を採用して頂きました。
2026年の卒業式にも3校の卒業式でヨシ紙を採用予定です。

今後は鵜殿のヨシ原での取り組みをモデルとし、全国のヨシ原が抱える共通課題を解決しながら、持続可能な自然環境と産業の共生を実現していきます。

(注)一般社団法人ヨシオープンイノベーション協議会…ヨシの活用やブランド化に取り組む法人。小山氏、鈴木氏は同団体の顧問。
ヨシを活用した製品(画像)
ヨシを活用した製品