本文
高槻市交通部職員向け対応要領(テキスト版)
高槻市交通部における障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領
(目的)
第1条 この要領(以下「対応要領」という。)は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下「基本方針」という。)に即して、法第7条に規定する事項に関し、交通部の職員(非常勤職員及び臨時的任用職員を含む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。
(不当な差別的取扱いの禁止)
第2条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障がい(身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がい及び高次脳機能障がいを含む。)その他の心身の機能の障がい(難病等により起因する障がいを含む。)をいう。以下この対応要領において同じ。)を理由として、障がい者(障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの。以下この対応要領において同じ。)でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障がい者の権利利益を侵害してはならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。
なお、別紙中、「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する(次条において同じ。)。
(合理的配慮の提供)
第3条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障がい者の性別、年齢及び障がいの状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。これに当たり、職員は、別紙に定める留意事項に留意するものとする。
(監督者の責務)
第4条 職員のうち、所属長及び施設長(以下「監督者」という。)は、前2条に掲げる事項に関し、障がいを理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。
(1) 日常の執務を通じた指導等により、障がいを理由とする差別の解消に関し、その監督する職員の注意を喚起し、障がいを理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。
(2) 障がい者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。
(3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、監督する職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。
2 監督者は、障がいを理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。
(相談体制の整備)
第5条 職員による障がいを理由とする差別に関する障がい者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するための相談窓口を交通部総務企画課に置く。
2 相談等を受ける場合は、性別、年齢、状態等に配慮するとともに、対面のほか、電話、ファクス、電子メールに加え、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要とする多様な手段を可能な範囲で用意して対応するものとする。
3 第1項の相談窓口に寄せられた相談等は、相談者のプライバシーに配慮しつつ関係者間で情報共有を図り、以後の相談等において活用することとする。
4 第1項の相談窓口は、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。
(研修・啓発)
第6条 障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、法や基本方針等の周知や、障がい者から話を聞く機会を設けるなど必要な研修・啓発を行うものとする。
2 新たに職員となった者に対しては、障がいを理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに監督者となった職員に対しては、障がいを理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、それぞれ、研修を実施する。
3 職員に対し、障がいの特性を理解させるとともに、性別や年齢等にも配慮しつつ障がい者に適切に対応するために必要なマニュアル等により、意識の啓発を図る。
附 則
この要領は、平成28年4月1日から施行する。
附 則
この要領は、令和6年4月1日から施行する。
別紙
高槻市交通部における障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領に係る留意事項
第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方
法は、障がい者に対して、正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障がい者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障がい者の権利利益を侵害することを禁止している。なお、車椅子、補助犬その他支援機器等の利用や介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障がいを理由とする不当な差別的取扱いに該当する。
また、障がい者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障がい者を障がい者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障がい者に対する合理的配慮の提供による障がい者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。
このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障がい者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障がい者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。
第2 正当な理由の判断の視点
正当な理由に相当するのは、障がい者に対して、障がいを理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合である。交通部においては、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障がい者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)及び交通部の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。
職員は、正当な理由があると判断した場合には、障がい者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際、職員と障がい者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められる。
第3 不当な差別的取扱いの例
正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例及び正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例は以下のとおりである。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないこと、正当な理由に相当するか否かについては、個別事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意する。
(正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例)
・障害があることや車椅子の利用等の社会的障壁を解消するための手段の利用等のみをもって、乗車を拒否する。
・他の乗客に迷惑が掛かるという漠然とした理由で、お互いに相手の立場を尊重しながら、相互理解を図ることなく、利用を拒否する。
・運転者が、乗車スペースがあると認識していたにもかかわらず、介助者や他の乗客への協力を依頼することなく車椅子使用者だけ乗車を拒否する。
・車椅子固定場所の座席を別の乗客が利用している状況において、固定場所の座席を利用している乗客に対し協力を求めることなく、すでに他の乗客が当該座席を利用していることのみをもって車椅子利用者の利用を拒否する。
・車椅子使用者に対し、混雑する時間のバス利用を避けてほしいと言う。
・車椅子利用者であることのみを理由に、その必要性についての情報提供を適切に行うことなく、路線バス利用に際して事前の連絡を条件とする。
・身体障害者補助犬法に基づく盲導犬、聴導犬及び介助犬の帯同を理由として乗車を拒否する。
・障害者が介助者を伴って窓口に行った際に、障害者本人の意思を全く確認せず、介助者のみに対応を求める。
・障害があることのみを理由として、一律に、障害者に対して必要な説明を省略する、または説明を行わない。
(正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例)
・合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認する。(権利・利益の保護)
・車内が混雑していて車椅子スペースが確保できない場合、車椅子使用者に説明した上で、次の便への乗車をお願いする。(安全の確保)
・低床式車両やリフト付きバスでない場合、運転者ひとりで車椅子使用者の安全な乗車を行うことは無理と判断し、他の利用者に車内マイクを使って協力をお願いしたが、車内で利用者の協力が得られず乗車できない場合、説明をした上で発車する。(事業の目的・内容・機能の維持)
・車椅子又はベビーカーの乗客がすでに車椅子固定場所を利用中のため、乗車を断る。
・車椅子の形態により、車椅子がバスに備え付けられている装置等によって固定できないため、転倒等により車椅子利用者や他の乗客が怪我をするおそれがあるため、乗車を遠慮してもらう。(安全の確保)
・車椅子使用者がバスに乗車する際、合理的配慮の提供等や、車椅子使用者が安心して乗車でき、車内の利用者にも車椅子スペースを開けてもらうよう協力していただきやすいように、可能な限り乗車予定の事前連絡の協力のお願いについてホームページ等で周知する。
第4 合理的配慮の基本的な考え方
1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。
法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮は、障がい者が受ける制限は、障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、障がい者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。
2 合理的配慮は、交通部の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障がい者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。その提供に当たってはこれらの点に留意した上で、当該障がい者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、当該障がい者本人の意向を尊重しつつ「第5 過重な負担の基本的な考え方」に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要がある。建設的対話に当たっては、障がい者にとっての社会的障壁を除するための必要かつ現実可能な対応案を障がい者と職員が共に考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要である。例えば、障がい者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、当該行政機関として対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられる。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当たっては、障がい者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障がいのある女性に対しては、障がいに加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。
なお、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。
3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。
また、障がい者からの意思表明のみでなく、障がいの特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障がい者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。
なお、意思の表明が困難な障がい者が、家族、介助者、法定代理人等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障がい者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障がい者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。
4 合理的配慮は、不特定多数の障がい者等の利用を想定して事前に行われる建築物や車両のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の「環境の整備」を基礎として、個々の障がい者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障がいの状態等が変化することもあるため、特に、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。なお、多数の障がい者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障がい者への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことや、相談・紛争事案を事前に防止する観点から、合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、内部規則やマニュアル等の制度改正等の環境の整備を図ることは有効である。
第5 過重な負担の基本的な考え方
過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障がい者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。その際には前述のとおり、職員と障がい者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。
・事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容、機能を損なうか否か)
・実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
・費用・負担の程度
第6 合理的配慮の例
第4で示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるが、例としては、次のようなものがある。なお、記載した例はあくまでも例示であり、必ず実施するものではないこと、記載されている例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意する必要がある。
(合理的配慮の提供の例)
・障害者や介助者等からの意思の表明(障害特性によっては自らの意思を表現することが困難な場合があることに留意。以下同じ。)に応じて、コミュニケーションボードや筆談、IT 機器(タブレット等による図や絵)の活用等により対応を行う。
・定期的にバスを利用する車椅子使用者の利用時間に合わせ、路線を指定してバリアフリー対応の車両を配車する。
・車椅子使用者がバスに乗車する際、車内の利用者へ車椅子スペースを空けてもらうよう車内案内により協力をお願いする。
・運賃支払いの手助けを必要とする障害者については、障害の特性に応じた配慮をする。
・スロープ板を出すことが困難なバス停では、前後で乗降可能な位置にバスを停車する。
・運行に支障のない範囲で、バスと歩道等のすき間が広く開かないよう停車する。
・視覚障害や聴覚障害のある利用者のため、音声合成装置や停留所名表示器を装備するなど、事業運営の範囲内で可能な限りハード面での充実を図るとともに、肉声による車内案内をこまめに行う。
・車椅子使用者の乗車ができないことがないように、スロープや車椅子固定装置の整備・点検を徹底する。
・運転者への教育等を行うことにより、高齢者や障害者等の特性を理解することで、本来業務に付随する範囲内において適切な接遇・介助や、必要に応じてトラブル防止のための車内案内を行う。
・低床式車両やリフト付きバスでない場合、運転者ひとりで車椅子使用者の安全な乗車を行うことは無理と判断し、他の利用者に車内マイクを使って協力をお願いする。
・運行業務の範囲内において、やむを得ず通常の停留所から位置をずらして停車する場合には、乗客に対し、降車時の安全確保のための注意を促す。
・障害者や介助者等からの意思の表明に応じて、乗降が困難な乗客に対しては、本来業務に付随する範囲内において介助等を行う。
・混雑時に視覚障害のある利用者から乗降の補助を求められた場合において、状況を丁寧に説明した上で、周囲の混雑状況が解消するまで待機を提案する。利用者の了解が得られれば、混雑の解消後、乗降の補助を行う。
(合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例)
・電話利用が困難な障害者から直接電話する以外の手段(メールや電話リレーサービス等の手話を介した電話等)により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、具体的に対応方法を検討せずに対応を断る。
(合理的配慮の提供義務違反に該当しないと考えられる例)
・車両外(公道等)における移動介助等の本来業務に付随しない依頼などに対して、丁寧に説明を行ったうえで断る。(本来の業務に付随しないもの)
・障害内容や必要な配慮に関する情報の提供が行われない(配慮を提供する側がどのような対応をとることが適切であるか判断できない)状況において、建設的な対話なく配慮の提供を求める障害者の対応を断る。(障害者側が建設的対話に応じないもの)
・先着で販売している割引乗車券について、障害のため当該販売開始日に購入手続を行うことが困難であることを理由に、当該割引乗車券をあらかじめ別途確保しておくよう求められた場合において、当該対応を断る。(障害者以外と比べて同等以上の機会提供)。