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令和2年第8回高槻市教育委員会定例会会議録

ページID:004774 更新日:2022年3月22日更新 印刷ページ表示

令和2年8月19日(水曜日)午後1時00分、令和2年第8回高槻市教育委員会定例会を総合センター14階会議室に招集した。

出席者(5人)

樽井 弘三 教育長
八十 祐治 委員
深堀 基子 委員
美濃 律 委員
浦野 真彦 委員

説明のために出席した事務局職員の職、氏名

教育次長 土井 恵一
学校教育監 安田 信彦
教育指導課長 青野 淳
教育センター所長 藤田 卓也
教育総務課副主幹 多留谷 泰子
教育指導課課長代理 丸山 みち子
教育指導課副主幹 杉野 暁子
教育指導課副主幹 水口 裕介
教育指導課副主幹 平井 新一郎
教育センター所長代理 山本 佐和子
教育センター副主幹 村上 良子
教育センター副主幹 武藤 亮
教育センター副主幹 中村 吉博
教育センター副主幹 平尾 陽
教育指導課指導主事 直原 考志
高槻市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会委員長 竹原 正和
教育総務課副主幹 奥 博志

議事日程

日程第1 議案第25号 令和3年度使用高槻市立義務教育諸学校教科用図書の採択について

(午後1時00分開会)

樽井弘三教育

ただいまから、令和2年第8回高槻市教育委員会定例会を開会いたします。

なお、本日の会議に傍聴の希望がございましたので、許可をいたしております。

本日の会議の出席者は5名でございます。なお、本日の会議の署名委員は、美濃委員 浦野委員にお願いいたします。

樽井弘三教育
ここで、会議録の承認をお願いいたします。本日は、令和2年第7回定例会会議録の承認をお願いいたします。会議録の朗読を省略してご異議ございませんか。

(異議なし)

(署名委員 会議録署名)

樽井弘三教育長
それでは、議事に入ります。

日程第1、議案第25号、「令和3年度使用高槻市立義務教育諸学校教科用図書の採択について」を議題といたします。提案理由の説明を求めます。

学校教育監(安田信彦)(提案理由説明)

ただ今上程されました日程第1、議案第25号「令和3年度使用高槻市立義務教育諸学校教科用図書の採択について」の提案理由をご説明いたします。

「義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律」に基づき、教育委員会において、令和3年度に高槻市立小中学校で使用する教科用図書を採択することとなっております。

今年度は、中学校は、全ての教科書について、文部科学省の「中学校用教科書目録」に登載されている教科書のうちから、採択することになっております。

また、小学校につきましては、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律第14条、同法施行令第15条第1項の規定により、令和2年度使用教科用図書と同一の教科書を採択しなければならないとなっております。

5月の教育委員会でご承認をいただきました、「高槻市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会」でございますが、大阪府教育委員会が定めた教科用図書選定委員会運営要領、高槻市附属機関設置条例、及び高槻市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会規則に則り、5月20日から7月3日にかけて、4回開催されました。

同委員会では、教育委員会からの「中学校用の全ての教科用図書について調査審議し、答申すること」、「特別支援学級において使用する、学校教育法附則第9条関係教科用図書について答申すること」との諮問により、教科用図書の調査及び研究を行い、審議を重ねてまいりました。

7月17日に選定委員会委員長から「令和3年度使用義務教育諸学校教科用図書の選定について」の答申があり、樽井教育長に受理していただいたところでございます。

委員のみなさまにおかれましては、対象となる教科書や意見書等につきまして、すでに、ご覧いただいているところでございます。

本日は、答申を参考の上で、教科書目録に登載されております全発行者についてご審議いただき、高槻市立小中学校で使用する教科用図書を採択していただきたく、議案を上程いたします。

なお、選定委員会からの答申につきましては、「高槻市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会」委員長からご説明いたしますので、よろしくお願いいたします。

選定委員長(竹原正和)(答申について理由説明)

高槻市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会は、高槻市附属機関設置条例及び高槻市立義務教育諸学校教科用図書選定委員会規則に則り、令和2年5月18日付けで高槻市教育委員会より、令和3年度から中学校において使用する教科書について調査審議すること、また、令和3年度に特別支援学級において使用する学校教育法附則第9条関係教科用図書について調査審議するよう諮問を受けました。

その後、本委員会では、5月下旬から7月上旬までの約1ヶ月半にわたって教科書採択の公正かつ適正な実施をはかるため、それぞれの発行者の教科書見本について直接調査及び研究を行うとともに、各種目の調査員による調査報告書、大阪府の教科用図書選定資料や学校意見書、教科書展示会における意見書等も参考にしつつ調査研究を進めてまいりました。

選定委員である校長代表、各教科代表や教育委員会事務局職員は教育公務員としての専門的な立場から、また、保護者代表の委員は子どもが本市の小中学校に通学している市民としての立場から意見を出し合い、活発な審議を積み重ねてきたところです。

このような審議を踏まえ、令和3年度使用中学校教科用図書について調査審議を行った結果について、教育長へ答申いたしました。また、令和3年度に特別支援学級において使用する学校教育法附則第9条関係教科用図書についても答申いたしましたので、よろしくお願いいたします。

樽井弘三教育

ただいま、提案理由説明及び選定委員長から答申についての説明がありました。説明にありましたとおり、すでに、教育委員会は、7月17日に選定委員長から選定委員会の答申を受理いたしております。

その後、教育委員の皆様には、答申書や調査報告書等の資料をお渡ししており、教科書目録に登載されている教科書について調査いただいておるところでございます。

本日は、選定委員会の答申をもとに、まずは中学校各種目の教科書の採択をしてまいりたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育

それでは、各教科・種目ごとに審議をいたします。

最初に、国語について審議いたします。事務局より、調査審議結果についての報告をお願いします。

【1.国語】

教育指導課指導主事(直原考志)
各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい国語

「学びを支える言葉の力」として、学習を深める基盤となる言語能力を確認した上で、各領域の内容にのぞむことができ、学習の終わりに「言葉の力」として、単元で身につけた言葉の力を振り返られるようになっている。

三省堂 現代の国語

「読み方を学ぼう」として、他教科や社会生活で活用できる力を明示することによって、活用できる場面を想定しながら学ぶことができる。話し合いの仕方においても、汎用的な力としての「話し合いのこつ」を各学年4系統ずつに分類し、系統立てて学ぶことができる。

教育出版 伝え合う言葉 中学国語

学習指導要領の指導事項に準拠した学習過程を明示し、子どもたちが見通しをもって学習に取り組むことができるように工夫されている。また、SDGsの視点を取り入れ、自らが発見した課題を深く考えるための「問い」が多く取り入れられている。

光村図書 国語

各単元において学習の目的・意図や学習活動を明示し、学習に見通しを持てる工夫がされており、単元の振り返りにつなげることができる。また、「話すこと・聞くこと」「書くこと」の領域では、身近な課題設定とともに具体例が多く提示されており、社会生活に活きる力の育成に向けた単元が充実されている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

浦野真彦委員
新学習指導要領にも「言語能力の育成」は言及されていますが、高槻市の子どもたちにとっても、言語能力は、全ての学習に必要となる大事な力です。言語能力の育成のために、国語科の果たす役割は大きいと思いますが、各教科書において、どのような工夫がされていますか。

教育センター所長(藤田卓也

言語能力の育成についてでございますが、委員仰せのとおり、言語能力は、国語科がその育成の要の教科でございますので、すべての学習の基盤となる資質・能力であり、各発行者とも様々な工夫をしております。

一例を申し上げますと、東京書籍におきましては、単元の学習の導入で「学びを支える言葉の力」を確認し、単元の終わりに身に着けた「言葉の力」を振り返ることができるようになっており、授業者も子どもも「言葉の力」を育てていることを強く自覚して取り組むことができます。

三省堂におきましては、「読み方を学ぼう」「思考の方法」等のコーナーが設けられており、一貫して「学び方」を習得させ、「どう読むか」の視点を知ることで、言葉を正確に理解する力を鍛えることができます。また、「話し合いのこつ」「語彙を豊かに」などのコーナーにより、適切に表現する力を磨くことができます。言語能力の「正確に理解し、適切に表現する」という視点が随所に盛り込まれています。

教育出版におきましては、各学年の初めに一年間で育てていく言葉の力を捉えるために「言葉の地図」というコーナーがあります。社会生活で学びを活かしていくために、どのような言葉の力を身に着けていくかの全体像を確認することができるよう工夫されています。

光村図書におきましては、これまで学習した言葉の力を振り返ったり、関連付けたりする工夫として、単元の冒頭や末尾のページに既習の言葉を確認するための工夫が見られます。

美濃律委員

高槻市の実態として、「書く力」が課題として挙がっていますが、子どもたちの「書く力」の育成に対して、各発行者でどのような工夫が見られますか。

教育センター所長(藤田卓也

書く力の育成についてでございますが、各発行者とも様々な工夫がされています。

東京書籍においては、「書くこと」の領域での、ゴールに向けた学習過程が分かりやすく示されていたり、具体例の資料が豊富であったりするなど、書くことが苦手な子どもにも取り組みやすい構成になっています。

三省堂においては、「レポート」や「創作」などといった内容を3年間見通して系列的に取り組めるよう示されております。社会生活に生かせる「書く力」を育む工夫がなされています。また、単元末に記述する振り返りの視点が明示されており、日常的な書く力の育成につなげるための工夫があります。

教育出版においては、学習指導要領の指導事項を授業者も子どもも意識することができるように、学習過程の中に明示することで、「つけたい力」が焦点化されています。

光村図書においては、「書くこと」の領域の学習が、系統性を重視して作られており、既習の知識を生かして書くための工夫がされています。また、作文の手本や具体例の提示も多くあり、生徒が正しく書くための手だても工夫されています。

八十祐治委員
「書く力」や「言語能力の育成」とも関連する質問になりますが、子どもたちの語彙を豊かにすることが大事だと考えます。子どもたちの語彙を充実させるための工夫がある発行者はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

委員仰せの、語彙に関する指導についてでございますが、国語科の学習指導要領改訂のポイントに、語彙指導の充実・改善が挙げられていることからも、各発行者に工夫が見られます。

特徴的なものとして、例を挙げさせていただきますと、東京書籍においては、「広がる言葉」というコーナーにおいて、文章中の表現と関連付けて語感を磨くことができるように工夫されています。資料編の「言葉を広げよう」と合わせて1,555の言葉が例文とともに示されており、各領域の学習に活かしながら語彙を増やすことができるように工夫されています。

三省堂においては、文中の脚注に類義語・対義語を多く示し、文脈から意味を推測・理解することで語彙を増やす工夫がなされています。また、資料編「語彙の広がり」において語句と語句の関係やつながり方を図で示し、多様な言葉の使い分けによって語感を磨くことを目指したつくりとなっております。

深堀基子委員
国語が苦手な子どもの学習意欲の向上につながるようにどの教科書も工夫されていると思うのですが、とくに工夫されている教科書はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

国語が苦手な子どもの学習意欲を高める工夫でございますが、各発行者ともに、内容の程度や紙面の構成等、国語を苦手と感じている子どもたちへの配慮が施されています。

特徴的なものを挙げますと、例えば東京書籍においては、中学生の日常生活の場面を漫画で表し、単元でつけたい力に対する課題意識を持つ「学習の扉」や、ゲーム感覚で学習できる「文法の窓」など、楽しく取り組むための工夫が随所に見られます。

また、三省堂においては、言葉の関係性をとらえることができるよう文章だけでなく図で表現して伝えている等、国語が苦手な子どもにも理解をうながす工夫が見られます。また、中学校1年生の内容や紙面の構成等において、小学校からの学習の接続への配慮が見られます。

美濃律委員

私たちは毎日多くの情報に囲まれて生活していますが、多くの情報の中から必要な情報を取り出したり、また情報を整理して発信するなど情報を活用したりする力の育成も、国語科の中で大切な学習の一つだと思いますが、その点に関して、何か特徴のある発行者はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

国語科の学習指導要領改訂のポイントの一つとして、「情報の扱い方」に関する指導事項が新設されています。そこでは言葉と言葉との関係性をとらえる力や言葉を整理する力を通して、情報活用能力の定着を目指しますが、この点におきまして、特徴的な発行者を挙げさせていただきます。

特に三省堂では、全ての学年において情報に関連する単元を設け、情報と文章とを関連付けながら自分の考えを深められるよう工夫されています。また、情報の整理に関わるスキルを定着させるための資料が充実しており、一覧として示されています。

光村図書においても、「情報」を活用して深い思考につなげるため、「情報整理のレッスン」や「思考のレッスン」が教材として位置づけられており、すべての領域の学びに活かせるよう指導していくことができます。

浦野真彦委員
国語は、教科書が変わった際に、教材文等も変わることになるかと思います。そのような中で、仮に現在と違う発行者の教科書を採択した場合、どのような影響がありますか。

教育センター所長(藤田卓也

いずれの発行者も新学習指導要領の趣旨に則り作成されているため、子どもたちの学習の充実につながるものになっています。確かに国語科においては、発行者が変わることで対応の必要性が他教科と比べて比較的高いということが考えられますが、どの発行者も「教材を教える」ことから「教材で教える」ことを意識して作られており、教材が変わっても「つけたい力」に基づいて授業ができると考えております。

八十祐治委員
新学習指導要領では、どの教科でも、対話を通して様々な考えに触れ、学習を深めていく過程が大事にされていると思いますが、対話においては、相手の意見を尊重しながらしっかりと話を聞き、理解する力が必要になると思います。そのような対話を適切にとる力の育成において、工夫されている教科書はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

コミュニケーションに係る力の育成についてでございますが、国語科の目標の中に、「社会生活における人との関わりの中で伝え合う力」という文言がございますように、各領域の各単元でコミュニケーション能力の育成につながる工夫がされています。

例えば、東京書籍においては、資料編に「話し合いの方法」として、すべての領域の学習活動に活かせるスキルが精選されて掲載されています。

また、三省堂においては、関わり合いながら思考を深める教材が系列的に設定されています。また「話し合いのこつ」として12種類の方策が提示され、授業のみならず社会生活において活用できる力を育成する工夫がされています。

深堀基子委員
高槻市でも若い教員が増えていますが、経験の浅い教員でも教えやすい教科書というのはありますか。

教育センター所長(藤田卓也

経験の浅い教員の教えやすさでございますが、どの教科書も、先ほどもありましたが、新しい学習指導要領にのっとり、各者工夫をして作成されております。内容は、どの発行者も充実したものとなっておりまして、経験の深さを問わず、教えることができると考えております。

樽井弘三教育

国語というのは、まさに言語能力を向上させる教科であります。同じように言語を対象とする教科として英語がございます。英語科との関連を図るのは、指導の効果を高めるうえでも、大変重要であると考えています。そういった視点から、どんな工夫がされているのかについて説明をお願いします。

教育センター所長(藤田卓也

国語科と英語科との関連についてでございますが、言語能力の育成については、言葉を直接の学習対象とする国語科を要としつつ、教育課程全体を通じた取組が求められています。英語科については、学習対象とする言語は異なりますが、ともに言語能力の向上を目指す教科でもあり、共通する指導内容や指導方法を扱う場面があります。その中で、言葉の働きや仕組みなどの言語としての共通性や固有の特徴への気付きを促す指導を行うことになるかと思います。

各発行者においては、スピーチやプレゼンテーション等の表現のスキルを、英語科のみならず各教科の指導に活かせるよう工夫がされています。

中でも特徴的な工夫を挙げると、三省堂においては言葉の学びに英語の学習を関連づける具体的なページがすべての学年に位置づけられています。日本語と英語の音節や語順の違い、慣用表現の違いを通じて、それぞれの言葉の働きや仕組みをより深く理解することにつなげることができます。

光村図書においては、「翻訳作品を読み比べよう」という教材において、他の言語で書かれたものが翻訳者によって、どのように置き換えられているかを考えさせるといった課題があり、日本語の表現の多様性に気付くことができます。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、国語について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

浦野真彦委員
これまでの審議から、私は、国語の教科書は、三省堂が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、浦野委員から三省堂が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育

ご異議が無いようですので、国語につきましては、三省堂を採択することに決します。

続きまして、次に書写について審議いたします。事務局から報告をお願いします。

【2.書写】

教育指導課指導主事(直原考志)
各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい書写

単元の終わりには学んだことを対話的に振り返る「振り返って話そう」が設けられており、対話を通して自身の習熟が確認できるという仕組みがある。また、自らの理解度を客観的に評価できる「書写テスト」が設けられており、確実な学習の定着につながる工夫がされている。

三省堂 現代の書写

コラムや補充教材が適宜配置されており、教室の実情に合わせて、再確認や更なる向上を目指した指導ができる。各教材の「見つけよう・考えよう」や学年末教材の「やってみよう」では、生徒どうしの対話を通して書写の学習を深められるよう工夫されている。

教育出版 中学書写

話し合い活動のポイントや学習用語を例示するなど、対話的な学びを支援するとともに、「書式の教室」など、学習した内容を、他教科や学校生活、日常生活に生かしていく力を身につけられるような教材が充実しており、生徒の学びやすさにつながるよう配慮されている。

光村図書 中学書写

「三年間のまとめ」のコーナーが設けてあり、学習の振り返りがしやすい。話し合う活動を取り入れ、対話を通して思考力、判断力、表現力等を養えるように工夫されている。「季節のしおり」や「日常に役立つ書式」のコーナーでは多くの言葉に触れ、実生活に生かせるようになっている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

美濃律委員

今回、書写に関する学習指導要領の大きな改訂点はなかったと聞いておりますが、変更した点はどんな点があるのか教えてください。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
委員仰せのとおり、現行の内容と大きな変更はありませんが、第1学年の変更は、現行では「イ漢字の行書の基礎的な書き方を理解して書くこと。」が、改訂では「(イ)漢字の行書の基礎的な書き方を理解して、身近な文字を行書で書くこと。」となりました。楷書とは異なる書き方、すなわち、「点画の方向や形の変化」「点画の連続」「点画の省略」「筆順の変化」「丸み」などの特徴を理解した上で、日常的に使うことが行書学習の目的であることを意識させる指導がより求められています。

第2学年では、現行と同じ内容が示されています。行書の書き方の習熟を図るとともに、行書に調和する仮名の書き方にも習熟することが求められています。

第3学年の変更は、現行では「ア身の回りの多様な文字に関心をもち、効果的に文字を書くこと」とありますが、改訂では「(ア)身の回りの多様な表現を通して文字文化の豊かさに触れ、効果的に文字を書くこと。」と示されました。新たに加わった「身の回りの多様な表現」「文字文化」の文言は、漢字や仮名の成り立ちや歴史的背景、文字が書かれた用具・用材、社会生活における文字の役割や存在意義、活字やデザイン文字と書き文字との関係、文字が審美の対象となって芸術(書)に昇華したことなどを指していると考えられます。これらの文字文化の豊かさを理解することは、日常生活における書写活動への高い意識につながり、ひいては高等芸術科書道への関心にもつながると期待されます。

浦野真彦委員
今説明していただいたところに関連しますが、学習指導要領改訂をうけ、現在使用している教科書と比べて変わった点について説明してください。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
学習指導要領の、漢字の行書の基礎的な書き方では「生徒自らが行書の特徴に気付き、どのようにすればこれらの特徴を生かした書き方ができるのかを考え、身近な文字を書く活動に積極的に役立てるような、主体的な学習がなされるように配慮することも重要である。」とあります。

東京書籍には、行書の学習や身近な文字を書く学習を含めた各単元末に、学んだことを説明する「振り返って話そう」というコーナーがあります。このような対話的活動を取り入れることで、生徒は思考を深め、次の学びへの意欲を高めることができ、主体的な学習につなげられます。

教育出版では、サイズがB5判からAB判のワイドサイズになり、見やすくなったとともに、「どんな点に注意する?」や「―について気付いたことを書こう」などの吹き出しを増やしたり、直接書き込めるようにしたりすることで、生徒自らが行書の特徴に気付き、どのようにすればこれらの特徴を生かした書き方ができるのかを考えられるような工夫が増えています。

深堀基子委員
さきほど、教科書のサイズを変更した発行者があるとのことでしたが、例えば、半紙の大きさとお手本の大きさを合わせているなど、教科書の大きさと見やすさなどは関係しているのでしょうか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
教科書の大きさと見やすさに関するご質問についてお答えさせていただきます。東京書籍と教育出版はAB判のワイドサイズで、三省堂と光村図書はB5判サイズとなっていますが、見本の大きさはどちらも変わりません。半紙の大きさは横243mm、縦333mmであり、教科書は横180mm、縦255mmなので、大きさは違いますが、縦と横の割合はほとんど同じです。もちろん、大きいサイズの方が見やすいとは思いますが、見本として使用する際には机からはみ出してしまうため、1長1短あるというところでございます。

八十祐治委員

昨年度の全国学力・学習状況調査の国語の問題の中で、封筒の書き方について問う問題がありましたが、学習内容を日常生活に結び付けることは大切であると考えます。このように日常生活の場面で生かす、という観点ではどのような工夫がされていますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
どの発行者も、各教科の学習活動や日常生活で生かすための工夫が見られます。

例えば、教育出版では、「学習を生かして書く」「学校生活に生かして書く」、また「書式の教室」など、学習した内容を、他教科や学校生活、日常生活に生かしていく力を身につけられるような教材が充実しており、すべての生徒にとって、「生きてはたらく書写力」を身に付けられるよう配慮されています。

光村図書では「日常に役立つ書式」という生活に役立つコーナーが設けてあり、手紙や年賀状、入学願書の書き方などを学べる工夫がされています。

美濃律委員

今、手紙や年賀状、願書の書き方とありましたが、最近では、子どもたちもスマホ等を使用することが増え、手紙などを書く機会が少なくなっているかと思います。書写の時間に、子どもたちにとって「書くことが楽しい」と感じることが大事だと思いますので、そのような点で、工夫、特徴のある教科書があれば教えてください。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
どの発行者も、生徒が意欲的に取り組むための工夫があります。

東京書籍では、親しみをもって学習ができるよう、生徒イラストや書写のキャラクターが各所に取り入れられています。また、文字文化コラム「文字のいずみ」で、文字の歴史や用具の写真、社会で使われる手書き文字や活字の写真といった、伝統的なものから現代のものまで幅広く取り上げられており、文字文化に興味関心がもてる工夫がされています。

三省堂では、生徒の知っている歌詞(ゆず「栄光の架橋」や森山直太朗「さくら(独唱)」から「平家物語」まで)を毛筆で練習することができたり、発展学習として、自分の好きな歌詞を書いたりすることで、毛筆で書く楽しさを知ることができる工夫がされています。

教育出版では、身の回りで見られる書や、先人の書の味わい深さを実感できるコラム、地域のシンボルである城址写真のコラムなど、文字に関するコラムが豊富に設けられ、生徒の発達段階に応じて、歴史上の人物が残した文字などのテーマを設定し、文字に対する興味・関心を高める工夫がなされています。

光村図書では、「文字の歴史」や「デザインと文字」「全国文字マップ」のコーナーなどで、いろいろな時代の文字の豊かさが興味を持って学べるように工夫されていたり、多様な筆記用具や現代的な文字のデザインなどが紹介されています。

浦野真彦委員
さきほど国語科でも話題になっておりましたが、新学習指導要領における「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて工夫されている教科書はありますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
「主体的・対話的で深い学び」の実現につきましては、どの発行者も、学習の見通しがもちやすいよう、学習の流れについて解説し、生徒が主体的に学習に取り組める工夫があります。

三省堂では、各教材に「目標」「振り返り」を設け、生徒自身が主体的に学習に臨めるようにしています。また、各教材の「見つけよう・考えよう」や学年末教材の「やってみよう」というコーナーでは、生徒どうしの対話をとおして書写の学習を深められるよう工夫しています。

教育出版では、学習指導要領で求められている「文字を効果的に書くことができる力」を育成するために、学習目標に続いて、「考えよう」「生かそう」「振り返ろう」の3段階で学習のステップが示されており、生徒が「どのように学ぶか」の見通しを持って主体的に学習できるようになっています。また、学習の進め方」について、批評して誤りを正す批正場面や、話し合い活動で用いる学習用語を例示するなどの具体的な手立てを入れることで、対話的な学びを支援しています。

深堀基子委員
実際に指導する教員にとって、特に使いやすさの点で工夫されているところはありますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
どの発行者も、実際に指導する教員の視点を考えた使いやすい工夫がなされています。

東京書籍では、一単元に一つ、系統的に整理された「文字を正しく整えて書くための知識・技能『書写のかぎ』」が配置されており、その一覧を見れば、中学校3年間だけでなく、小学校の学習内容も俯瞰することができるため、教える教員にとっても使いやすいものとなっています。

教育出版では、学習を生かして書いたり考えたり話し合ったりできる教材が豊富に配置されているため、幅広く活用できる点で、とても使いやすい内容となっております。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、書写について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

深堀基子委員
教科書と調査報告書を見せていただきました。どの教科書も日常生活に役立つ手紙や年賀状の書き方など取り扱っていますが、教育出版が3年間の学習の成果を生かそうで、たいへん詳しく取り扱われていることや、教科書が大きく見やすいこと、この間の説明からも、私は、教育出版の中学書写が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、深堀委員から教育出版が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育

ご異議が無いようですので、書写につきましては、教育出版を採択することに決します。

それでは、次に社会(地理的分野)について審議いたします。事務局より報告をお願いします。

【3.社会(地理的分野)】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい社会 地理

「もっと地理」「資料から発見!」というコーナーが設けられ、思考、判断、表現する力が付くよう配慮されている。各単元の導入において、「見方・考え方」を明示して捉えさせるとともに、学習課題を解決するための具体的な活動を設定し、深い学びにつなげるための配列がされている。

教育出版 中学社会 地理 地域にまなぶ

資料を読み取って考察する「読み解こう」のコーナーが設けられ、思考、判断、表現する力を育むよう工夫されている。学習の見通しなどを端的に表示し、その見通しに沿って学習が進行していくように配慮する等、深い学びにつなげるための配列がなされている。

帝国書院 社会科 中学生の地理 世界の姿と日本の国土

「日本の諸地域」の学習では、多くの地図や資料を活用しながら地域的特色を理解できるように内容が構成されている。単元全体を貫く問いを章・節の冒頭に設け、後半には「章(節)の学習を振り返ろう」が配置され、問いに対する課題が設けられ、深い学びにつなげるための配列がなされている。

日本文教出版 中学社会 地理的分野

「地理+α」というコラム等で、よりよい社会の実現に向けて課題を主体的に追究、解決しようと取り組める内容となっている。地理的な見方・考え方を働かせながら概要を大観し、学習を進め、最後に振り返る場面を設定する等、深い学びにつなげるための配列がなされている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

八十祐治委員
新学習指導要領では「見方・考え方」がキーワードの1つとなっていると思いますが、「地理的な見方・考え方」という視点から充実している発行者はありますか。

教育センター副主幹(中村吉博

委員仰せのご質問にお答えします。4者とも「地理的な見方・考え方」の視点から様々な工夫がなされています。

とりわけ、東京書籍につきましては、世界の諸地域を学習する導入の部分ですが、「これから世界の諸地域を学習する上で、世界各地の課題の共通点やちがいには、どのような理由があるのでしょうか。この章では、課題の背景にある、それぞれの地域の「つながり(空間的相互作用)」に着目して学習しましょう」とこの章で常に意識する見方・考え方を示しています。また、各節では、初めに単元を貫く探究課題が示され、生徒が見通しをもって学習を進める工夫をするとともに、見開きページの中でも「見方・考え方」を示し、地理的な見方・考え方を働かせて多面的・多角的に考察できる工夫がなされています。

帝国書院についてですが、巻頭部分に地理的な見方・考え方として「位置や分布」「その場所の特徴」「人と自然の関係」「ほかの場所への影響」「地域全体の傾向」の5つを示しています。また、単元全体を貫く問いを章・節の冒頭部分に設け、単元のまとまりで見通しをもって課題解決的な学習を行える工夫がなされています。

浦野真彦委員
子どもが、学習の課題や目的を理解し見通しをもって学習を進めるというという視点から充実している発行者はありますか。

教育センター副主幹(中村吉博

学習の課題や目的を理解し見通しをもって学習を進められるよう工夫されているところですが、こちらについても4者とも様々な工夫がなされています。

とくに、東京書籍におきましては、単元の導入時にこの章で常に意識する見方・考え方が示されています。見開きページにもそのページで働かせる「見方・考え方」が示されています。また、単元を貫く探究課題が示され、子どもたちが見通しをもって学習を進める工夫がされています。

帝国書院ですが、単元全体を貫く問いを章・節の冒頭部分に設け、子どもたちが見通しをもって学習を進める工夫がされています。

日本文教出版についてですが、単元の導入時にこの章で主に着目する見方・考え方が示されています。見開きページにそのページで働かせる「見方・考え方」が示され、子どもたちが見通しをもって学習を進める工夫がされています。

深堀基子委員
小学校での学習とのつながりや、歴史的分野、公民的分野との関連を意識しながら学ぶことも大切だと思いますが、そのような点で工夫はありますか。

教育センター副主幹(中村吉博

学習指導要領において、小学校社会科との接続の観点から、「世界と日本の地域構成」を第1学年の当初から学習することとし、小学校の学習内容を振り返ることができるよう改訂されました。各者とも「世界と日本の地域構成」に関する学習が第1学年の当初に配置され、小中の接続が意識されています。また、歴史的分野、公民的分野との関連の工夫がなされており、ページの下部に関連する項目などを記載しています。

特徴的なものとしては、東京書籍では、「小学校の社会で習ったことば」や「小学校マーク」等を配置し、小学校を振り返り、課題をつかむ導入の活動が設定されています。分野関連マークを設けられ、歴史的分野、公民的分野のみならず、理科等の他教科との関連も示されている。また、二次元コードも設けられ、該当分野の教科書が見られるような工夫がされています。

教育出版についてですが、巻頭に「小学校の社会の学習を振り返ろう」を設け、小学校の社会科でどのような学習をしてきたかや社会科の学習方法を振り返ることができるよう工夫されています。

日本文教出版につきましては、各章の導入ページに小学校で学習した内容が示されていたり、本文ページの下段には、歴史的分野・公民的分野との関連が示されており、地理的事象の歴史的背景を歴史的分野との学習順序にも配慮されています。

美濃律委員

学習指導要領の地理的分野の目標には、「地理的な課題の解決に向けて、思考・判断したことを説明したり、それらを基に議論したりする力を養う」とありますが、そのような視点から、各者の特徴を教えていただきたい。

教育センター副主幹(中村吉博

東京書籍についてですが、単元の導入時に小学校の学習を振り返りつつ、グループで話し合う場を設けるとともに、この章で常に意識する見方・考え方が示されています。また、単元を貫く探究課題が示され、生徒が見通しをもって学習を進める工夫がされています。単元末には「基礎・基本のまとめ」が配置され、続けて、学習内容を地理的な思考力、判断力、表現力等を用いてまとめる場として「まとめの活動」が設けられております。「まとめの活動」では、グループでの活動が設定されていたり、思考を整理できるように表が設けられる等、いろいろな思考ツールが提示されています。最後には単元導入時の探究課題を自分の言葉でまとめる個所も設けられ、多角的な視点から言語能力を育めるよう工夫されています。

教育出版についてですが、各見開きページに「表現」のコーナーが設けられ、本時の学習を振り返り、言葉で表現したり、対話したりする工夫がなされています。章末には、「学習のまとめと表現」が設けられ、基礎的な部分の振り返りと、「表現しよう」や「意見を交換しよう」が設けられ、思考・判断したことを表現・説明し、言語能力を育めるよう工夫されています。

帝国書院ですが、単元全体を貫く問いを章・節の冒頭部分に設け、子どもたちが見通しをもって学習を進める工夫がされています。各見開きページに「説明しよう」のコーナーが設けられ、学習内容を振り返り、習得した知識を活用して言語活動につなげることができるよう工夫がなされています。章末には「章(節)の学習を振り返ろう」が配置され、単元を貫く問いに対して思考、判断、表現する課題が設けられ、言語能力を育めるよう工夫されています。

日本文教出版については、各見開きに地理的な見方・考え方を働かせる問いを「深めよう」コーナーとして設け、習得した知識を活用することで、思考力・判断力・表現力を育む工夫がなされています。また、章末に「アクティビティ」や「チャレンジ地理」のコーナーを設け、思考・判断したことを表現・説明し、言語能力を育めるよう工夫されています。

浦野真彦委員

環境問題やエネルギー問題、食料問題、これらは世界的な課題として、全人類で関わるべき課題だと思います。これらについて各教科書では、どのように取り扱われていますか。

教育センター副主幹(中村吉博

各者とも「アジア」「ヨーロッパ」「アフリカ」「北アメリカ」「南アメリカ」「オセアニア」の各州において、人口問題や食糧問題、環境問題や多文化共生の視点などについて、取り上げられています。

特徴的なものとしては、東京書籍では、世界の諸地域学習の導入において、SDGsが取り上げられ、その州がかかえる様々な課題に着目しながら学習を進めていけるよう工夫されています。

教育出版については、各州の導入ページに、その州で考える地球的課題を示し、子どもたちが見通しをもって学習を進めることができるよう工夫されています。

帝国書院ですが、世界の諸地域学習の導入において、6つの州の地球的課題を示し、見通しをもって学習を進めることができるよう工夫されています。

日本文教出版につきましても、世界の諸地域学習の導入において、6つの州の地球的課題を示し、見通しをもって学習を進めることができるよう工夫されています。

深堀基子委員
教科書を見させていただくと、防災学習が各発行者詳しく取り扱われているように感じますが、防災・安全教育の観点から、工夫されている教科書はありますか。

教育センター副主幹(中村吉博

4者ともに防災・安全教育に関する紙面は増えています。東京書籍については20ページ、教育出版については22ページ、帝国書院については16ページ、日本文教出版については31ページの紙面を割いております。

特徴的な部分ですが、東京書籍につきましては、近畿地方で阪神大震災、東北地方で東日本大震災について扱っており、地域の防災に対する取り組みを通して、意識づけが図られています。また、自然災害全般を扱っているページもあり、自然災害に対する国や自治体の対策を具体的に取り上げ、地震や津波のメカニズムやハザードマップなどの詳細について主体的に学ぶための工夫が豊富にされています。

教育出版についてですが、地域の防災について調べるページや防災・減災について考えるページが掲載されています。また、東北地方を学ぶページでも、東日本大震災に関わって復興への取組等が掲載されています。

日本文教出版ですが、「災害にそなえるために」が他者に比べ、紙面を多く割かれています。自由研究コーナーで、「釜石の奇跡」がなぜ起こったのかを考え、改めてハザードマップを使える働きかけがされていたり、四国地方の学習で高知県の「巨大地震にそなえる過疎地域の取組」や東北地方の学習でも再度、震災後の新しいまちづくりのことが取り上げています。また、地域の在り方でも地域の課題を考察しようで自然と防災を取り上げる等されています。

美濃律委員

高槻の子どもたちの全国学力・学習状況調査等の実態から考えて何か有効的な、特徴的な教科書はございますか。

教育センター副主幹(中村吉博

全国学力・学習状況調査の結果からですが、目的や意図に応じて、自分の考えを根拠をもって表現することなどに課題がありました。先ほど、ご説明させていただきました「思考・判断したことを説明したり、それらを基に議論したりする力を養う」工夫がなされているかという観点が重要であると考えています。

その点から考えますと、東京書籍においては、単元末に、学習内容を地理的な思考力、判断力、表現力等を用いてまとめる場として「まとめの活動」が設けられており、グループでの活動が設定されていたり、思考を整理できるように表が設けられる等いろいろな思考のツールが整備され、最後には単元導入時の探究課題を自分の言葉でまとめる個所も設けられておりますので、思考判断したことを説明したり、それらを基に議論したりする力を養う工夫がなされていると感じております。

帝国書院につきましても、各見開きページに「説明しよう」のコーナーが設けられており、学習内容を振り返り、習得した知識を活用して言語活動につなげることができるような工夫がなされていたり、章末には単元を貫く問いに対して思考、判断、表現したことを説明する場面が設けられておりますので、思考・判断したことを説明したり議論したりする力を養う工夫がなされていると感じております。

八十祐治委員
家庭における自学自習という点で配慮されている教科書はありますか。

教育センター副主幹(中村吉博

4者とも、子どもたちの興味関心を高め、自学自習できるような様々な工夫がされています。

特徴的なものとしては、東京書籍では、冒頭に「この教科書の使い方と学び方」が掲載され、自学自習がしやすいように配慮されています。章のまとめにある「基礎・基本のまとめ」で、語句の確認や地図の空欄をうめるなどの基本的な内容を確認するための問題が設定されており、学習した内容が教科書等を読み返して答えられるように工夫されています。また、つまずきやすいポイントを二次元コードによる動画などで理解の支援がなされています。

帝国書院についてですが、冒頭に「この教科書の学習のしかた」が掲載され、自学自習がしやすいように配慮されています。節末には語句の確認や地図の空欄をうめるなどの基本的な内容を確認するための問題や「ワードチェック」コーナーがあり、自学自習しやすい内容になっています。また、「章(節)の学習を振り返ろう」の解答を二次元コードから閲覧できるようにもなっています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、社会(地理的分野)について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

美濃律委員
選定委員会の答申書の内容や、ここでの審議の結果、また、地理にアクセスやインタビューコラムなど地理の課題を主体的に解決しようと取り組める工夫や、深い学びにつなげるための配列や、地理的な見方・考え方の知識、技能の確認ができるように工夫された、東京書籍の新しい社会 地理が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、美濃委員から東京書籍が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、社会(地理的分野)につきましては、東京書籍を採択することに決します。

続きまして、社会(歴史的分野)について審議いたします。報告をお願いします。

【4.社会(歴史的分野)】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい社会 歴史

章の初めに年表で東アジアや欧米の国名を示してあり、日本と世界の歴史の流れを大きく捉えられるように工夫されている。章のまとめでくらげチャート、Xチャート、ステップチャートなどの思考を整理できるツールが提案されており、それらを使って学習した内容を深められるようになっている。

教育出版 中学社会 歴史 未来をひらく

章末の「学習のまとめと表現」のコーナーでは、学習した内容を時系列で振り返ることができるようになっており、世界の歴史との関連性について深められるようになっている。1単位時間ごとに学習内容を発展させて説明させる活動が盛り込まれており、学習を深めることができるようになっている。

帝国書院 社会科 中学生の歴史 日本の歩みと世界の動き

日本と主な世界の出来事、日本と海外の交流の様子が巻末年表に併記され日本と世界の歴史を関連付けて学習できるように配慮されている。章末は自分の考えを整理する、話し合いを通して答えを説明する、時代の特色を自分の言葉で説明するという構成で、段階的に振り返ることができる。

山川出版 中学歴史 日本と世界

章の初めに日本史と世界史のできごとが帯年表で示されており、加えてその時代の史料も掲載することで、視覚的に歴史の流れをつかむことができるようになっている。1単位時間のまとめでは、学習したことを発展させて調べたり、考察して話し合うなど学びを深めることができるようになっている。

日本文教出版 中学社会 歴史的分野

各編ごとに「チャレンジ歴史」が設定され、資料の読み取りから選択・判断させる学習まで、生徒の発達段階に応じた教材が掲載され、主体的・対話的な学びを促すような課題が設定されており、学習内容を深めるような工夫がなされている。

育鵬社 [最新]新しい日本の歴史

各章に「このころの世界は」が設けられ、各時代における日本と世界の歴史を関連付けて学習できるよう配慮されている。ページの学習のはじめに中心発問が、また最後には、その学習のまとめとなる発問が明示され、学びを深めることができるよう配慮されている。

学び舎 ともに学ぶ人間の歴史

章のはじめにその時代の世界の様子を表した世界地図が掲載され、日本と世界を関連付けて学習できるよう配慮されている。章末に、学習内容を比較・関連させて自分の考えをまとめ、発表するなどして考えを深めるための学習活動が設定されている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

八十祐治委員
歴史は、単に語句を暗記するのではなく、歴史に見られる事象から「なぜそのことは起こったのか」「どのような影響を及ぼしたのか」などを考え、議論をすることを通して、学びを深めることができると考えています。そのような視点から、特徴のある発行者はありますか。

教育センター副主幹(武藤亮)

学びを深めることについてですが、各者、学習指導要領に示されている歴史的分野の目標である、「多面的・多角的に考察したり、思考・判断したことを説明したり、それらを基に議論したりする力」をつけるために、まとめの活動の工夫がされていたり、生徒同士の話し合いを中心とした活動に重きを置いています。

その中でも、東京書籍では、各章の最後に、学習内容を考察する「まとめの活動」が設けられ、「くらげチャート」「ピラミッドストラクチャ」といった、思考をまとめることができるツールが提案してあり、それらを活用して時代や人物をまとめ、話し合うなど、学習した内容を深められる工夫がされています。

教育出版では、1単位時間ごとに「表現」で課題を提示し、学習内容を自分の言葉で説明したり、対話したりする課題が設定されており、学習を深めることができるようになっています。

帝国書院では、「章の問い」に対して、自分の考えを整理する、話し合いを通して答えを説明する、時代の特色を自分の言葉で説明するという構成で振り返ることができるようになっています。

深堀基子委員
歴史を学ぶうえで、生徒の興味・関心を高めることが特に重要だと思いますが、その点で特徴のある発行者はありますか。

教育センター副主幹(武藤亮)

興味・関心を高めるための工夫についてですが、各者、生徒の興味・関心を高め、主体的に学べるよう様々な工夫がされています。

その中でも、東京書籍では、「資料から発見!」のページで、絵巻物や浮世絵などの実物の資料を掲載し、資料の読み取りを通して各時代の理解を深め、興味・関心を高める工夫がされています。

教育出版では、各章末にある「歴史を探ろう」で、学習内容の中で生まれた疑問に対する補足がされており、学習を深め、興味・関心を引き出す工夫がなされています。

学び舎では、各ページに印象的なタイトルがつけられており、また、その時代の特色を表す資料が大きく示され、生徒が興味・関心をもてるよう工夫されています。

浦野真彦委員
現行教科書と比べて、ページ数は増えていますか、また増えているのであれば、基本的に授業時数が変わらない中で、何が増えたのですか。

教育センター副主幹(武藤亮)

ページ数の増加についてですが、各者、現行の教科書と比べて1割程度ページ数が増えています。増えている内容としては、巻頭の歴史を学ぶ意義や学習の進め方を学ぶページや、各章末などのまとめのページ等が増えています。これは、学習指導要領の改訂の要点に「歴史について考察する力や説明する力の育成の一層の重視」が挙げられており、各者において、各章のまとめなどで、社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて多面的・多角的に考察し、生徒同士の対話を通して自分の考えを伝え合う機会が多く設けられるなど、「深い学び」が実現できる構成となっていることからページ数が増えているものです。

美濃律委員

高槻市では連携型小中一貫教育を行っていますが、その中で小学校での学びを中学校の学びにつなげることは非常に大切なことであると考えています。小中の系統性といった視点から、特徴のある発行者はありますか。

教育センター副主幹(武藤亮)

小中の系統性についてですが、各者、小学校で学習したことを確認することができるようになっています。

その中でも、東京書籍では、章初めの年表に小学校で学習したことばを太字で示してあったり、「小学校マーク」が付してあったりと、小学校の学習を振り返り、学習への興味・関心を高め、スムーズに学習に入れるようになっています。

教育出版では、巻頭で「歴史のとらえ方・調べ方」がまとめられており、小学校で学習した人物や文化財の名称を時代ごとに確認でき、中学校の学習への移行がスムーズにいくように配慮されています。

日本文教出版では、ページ下部に「小学校」マークがあり、小学校段階で学習した人物名などがまとめられており、学習者が学びやすい工夫がされています。

八十祐治委員
自分の考えを伝え合い、学びを深めることと同時に、それを行う前提として基礎基本となる知識の習得も大切であると考えていますが、生徒が基礎基本を確実に習得できるように工夫されているところはありますか。

教育センター副主幹(武藤亮)

基礎基本の確実な習得についてですが、各者、生徒が基礎基本を確実に習得できるように工夫されていますが、特徴のある発行者とすると、

東京書籍では、見開き1ページのまとめの「チェック」で、1単位時間あたりの学習内容をおさえるための発問が設定してあります。また、章のまとめにある「基礎・基本のまとめ」で、語句の確認や年表や地図の空欄うめなど、基本的な内容を確認するための問題が設定してあります。

帝国書院では、各部ごとの「学習をふりかえろう」では、年表を用いて学習を整理する課題や資料の読み取りがあり、学習内容の整理ができるように配慮されています。

日本文教出版では、各編の最後に「学習の整理と活用」が設定されており、地図や年表を活用して学習内容の定着を促すように配慮されています。

浦野真彦委員
博物館や資料館など、興味のある・ないは、大人でも分かれるところだと思いますが、その地域に受け継がれた伝統や文化財から、その時代背景について、興味を持って考察するなどの経験をすることは重要なことだと思います。伝統や文化の学習という点で、特徴のある発行者はありますか。

教育センター副主幹(武藤亮)

伝統や文化の学習ということですが、今回の学習指導要領の改訂の中では、「我が国の様々な伝統や文化」についての学習内容の充実が挙げられていますので、各者、内容を充実させています。

その中でも、東京書籍では、「もっと歴史」というコラムで、神話やアイヌ文化など、現代に受け継がれている文化を扱い、我が国の伝統や文化に対する理解を深め、伝統や文化の継承者としての資質や能力を養えるように工夫されています。

山川出版では、表紙見開きに、日本の世界遺産を地図付きで紹介してあります。また、旧国名と現在の都道府県の県境が示してあり、比較して見ることができるようになっています。

深堀基子委員
歴史の学習では、基本的に古代から現代までの時間的な流れに沿って学習を進めていくことになりますが、その中でも、中世の日本、近世の日本など、そのときどきの世界の動きとも関連付けながら、その時代について的確にとらえていくことが大切だと思います。それぞれの時代についての特色を確実にとらえるための単元の構成の工夫は、各発行者どのようにされていますか。特徴的な点があれば教えてください。

教育センター副主幹(武藤亮)

それぞれの時代についての特色を確実にとらえるための単元構成の工夫についてですが、各者、それぞれの時代について特色を確実にとらえるための構成の工夫がされています。

その中でも、東京書籍では、単元全体を貫く「探究課題」を立てる「導入の活動」、「本文」、1単位時間ごとの「学習課題」を解決しながら進める「問いの追究」、「探究課題」を解決する「まとめの活動」という流れで単元が構成されています。

帝国書院では、時代の特色が一望できる「タイムトラベル」、章・節ごとの単元を貫く問い、歴史の流れがわかる本文、単元最後の「節の問いを振り返ろう」「章の問いを振り返ろう」という流れで単元が構成されています。

美濃律委員

先ほどの「伝統や文化の学習」に関してですが、伝統や文化は地域に根差したものが多いと思いますが、実際に身近な地域の歴史を調べる学習活動は設定されているのですか。

教育センター副主幹(武藤亮)

身近な地域の歴史を調べる学習活動についてですが、各者、身近な地域の歴史について、課題を追究したり解決したりする活動を取り扱っています。

その中でも、東京書籍では、「身近な地域の歴史」のコーナーで、テーマ設定→調査→考察→まとめ→発表→振り返りという流れを示し、調べ方や社会的な見方・考え方を働かせる考察の仕方、まとめ方の例示などがされています。

育鵬社では、「地域の歴史を調べてみよう」で、大阪の歴史を生徒自らが聞き取り調査をするなど情報を収集し、レポートにまとめて発表する方法を示しています。

樽井弘三教育

日本の歴史、日本史というのは、世界の歴史のダイナミックな動きの中で、変化していっていると、そのように考えています。昨今、歴史認識という点でも様々話題になっているところですが、そういった意味で、世界の歴史の流れの中で、日本の歴史を捉えるという視点で、各発行者はどんな工夫をされているのか、お願いしたいと思います。

教育センター副主幹(武藤亮)

新しい学習指導要領の中で、改訂の要点としまして、我が国の歴史の背景となる世界の歴史の扱いの一層の充実ということが、挙げられております。そのような改訂の要点を、各者反映させまして、世界史については、日本史に直接関わる部分と間接的に関わる部分があるのですが、新しい教科書では、間接的に関わる部分も取り上げて、世界史の中での日本史を見ていけるよう工夫がされております。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、社会(歴史的分野)について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

八十祐治委員
私は、この場の審議から考えまして、東京書籍が良いと考えますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、八十委員から東京書籍が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、社会(歴史的分野)につきましては、東京書籍を採択することに決します。

続きまして、社会(公民的分野)について審議いたします。報告をお願いします。

【5.社会(公民的分野)】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい社会 公民

「見方・考え方」のコーナーでは、現代社会の見方・考え方を働かせ、課題の解決に向けて主体的に関わろうとする態度を育む内容が適切に取扱われている。各単元の学習の過程を構造化して明示することや「チェック&トライ」などにより基礎的・基本的な事項を習得できる内容になっている。

教育出版 中学社会 公民 ともに生きる

「読んで深く考えよう」や「言葉で伝え合おう」では、社会的事象について多面的・多角的に考えたり表現したりして学習できる内容や18歳の選挙権を扱うなど学習課題を社会生活と関連付け、主体的に関わる態度を養う内容が取扱われている。

帝国書院 社会科 中学生の公民 よりよい社会を目指して

「章の学習を振り返ろう」では、さまざまな見方・考え方を取り入れて自分の考えを広げる学習が設定されるなど、言語活動を通して、多面的・多角的に考える力を育成できる内容が取扱われている。「学習の前に」では、大きな資料を設置し、実社会に興味を持たせ、生徒の気付きを促す内容となっている。

日本文教出版 中学社会 公民的分野

「学習課題」のコーナーには、見方・考え方が明確に示され、多面的・多角的に社会的事象を考察できる内容が取扱われている。多くの図版でマンガを用いて解説するなど抽象的な社会の仕組みを具体的にイメージできるよう配慮されている。

自由社 新しい公民教科書

多面的・多角的に考察し、班でまとめて発表するなどの協働学習のコーナーにより、適切に表現する力を育成することができるようになっている。図表や資料が大きく見やすい配置となっていることや、重要な語句を振り返るコーナーがあるなど、基礎的・基本的な内容について適切に取扱われている。

育鵬社 [最新]新しいみんなの公民

「何々の入り口」というコーナーでは、その章の内容と生徒の身近な社会生活との関わりがわかるようになっており、課題解決に向け、主体的に関わろうとする態度を育む内容が取扱われている。社会的事象の内容や事象間のつながりを丁寧に説明しており、基礎的・基本的な内容について適切に扱っている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

八十祐治委員
地理的分野・歴史的分野と今まで採択してきましたが、あらためて、3つの分野からなる「社会科」について、今回の改訂における基本的な考え方やポイントについて説明してください。

教育センター所長代理(山本佐和子)

社会科全般の改訂の基本的な考え方ということでございますが、基本的な改訂の考え方としまして、3つの分野を貫いて、基礎的・基本的な知識・技能の確実な習得を図ること、また社会的な見方・考え方を働かせた思考力・判断力・表現力等を育成すること、主権者として、持続可能な社会づくりに向かう社会参画意識の涵養、よりよい社会の実現に向けて、課題を主体的に解決しようとする態度の育成などが挙げられます。

また、社会科だけではありませんが、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の一層の推進も掲げられています。また、社会科としまして、資料の取り扱いについてもポイントとなっており、様々な見方があるなか、有益、適切で偏りのない教材の取り扱いについても改訂のポイントとしてあげられます。また今回、社会科の目標としましては「グローバル化」「主体的に」という文言が追加されたことも、社会状況を踏まえたものと考えます。

浦野真彦委員
公民的分野の学習指導要領改訂のポイントや新しい教科書が、現在使用している教科書と変化している点について聞かせてください。

教育センター所長代理(山本佐和子)

公民的分野の学習指導要領改訂のポイントというご質問ですが、先ほどの社会科の部分と重なるところもありますが、現代社会の見方・考え方を働かせる学習の一層の充実や課題の探究を通して社会の形成に参画する態度を養うことの一層の重視などがあげられます。次に、現行の教科書との変更につきましては、これらの改訂ポイントを踏まえ、現代社会の諸課題を受けた変更が多くなっています。

例えば、学習指導要領の内容の取扱いで「情報化」について「人工知能の急速な進化」が具体的な事例として示されたことがあり、これを受けまして、東京書籍では、「情報化」のページにおいて、AIの進化により地震の発生を分析し、緊急地震速報を迅速に発信できることなどを扱っております。

また、新しく事業を起こす「起業」という文言の明示もあり、これを受けまして、例えば、帝国書院では、「パン屋を起業しよう」などのコーナーを設け、実際に「企画書を書く」といったリアリティある学習を展開しています。

また、ワークライフバランスの観点を反映し、仕事と生活の調和を図るといったことにつきましても、各者適切に取り上げていると考えております。

深堀基子委員
高槻市が大切にしている「社会参画力の育成」と社会科の公民的分野の学習は関連が深いと感じますが、その点で特徴的なことがあれば、教えていただきたい。

教育センター所長代理(山本佐和子)

高槻市が大切にしている「社会参画力の育成」についてですが、本市が掲げる社会参画力に育成については、今回の国の学習指導要領の改訂においても重視したものとなっていることから、各者充実が図られています。

例えば、東京書籍では、中学生が社会参画している事例の紹介や「18歳へのステップ」という特設ページを設け、選挙権年齢や成年年齢の引き下げを受けて、準備できるようになっている点などが特徴としてあげられます。

教育出版では、自分の地域の課題を探し、それについての解決策を考え自治体に提言するといった活動を掲載しております。

日本文教出版では、主体的な学びと社会参画を促す特設ページ「明日に向かって」が設定されており、職業について調べる学習、まちづくりへの参加、災害に強い暮らしを築くなどのテーマがあり、社会の形成に子どもたち自身が主体的に参画する意欲を高められる学習が展開できるようになっています。

美濃律委員

「主体的・対話的で深い学び」の実現は、とても大切なことであると考えますが、各教科書で工夫している点や特徴などはありますでしょうか。

教育センター所長代理(山本佐和子)

「主体的・対話的で深い学び」について、特徴的なところですが、各者とも充実が図られています。

例えば、東京書籍では、章の学習全体を貫く「探究課題」を軸に構造化されており、本文や資料を基にこの「探究課題」を追究しながら主体的に学習を深めていくことができます。また、「みんなでチャレンジ」というコーナーでは、生徒同士が、これまで学んだ知識を活用して、思考、判断した内容を話し合うなどの対話的な学びを通して、深い学びにつなげる学習ができるよう工夫されています。

日本文教出版では、見開きごとに学習課題が示され、見通しを持って主体的に学習できるようになっています。また学習課題に対する見方・考え方も併せて示され、考える視点が明確で、子どもたちにとって学びを支援するものとなっています。章末の「チャレンジ公民」というコーナーでは、対話的な学習を通して深い学びにつなげていけるよう工夫されています。

八十祐治委員
社会については、どうしても苦手意識を持つ生徒もいると思います。生徒が関心をもって、意欲的に学べるよう工夫されているかという観点から、特徴的なものがありましたら、紹介してください。

教育センター所長代理(山本佐和子)

社会について苦手意識を持つ生徒についてのご質問ですが、苦手意識を持つ生徒にとって、学習する内容を身近なことと結びつけて、関心を持てるようにすることや、意欲的に学べるような工夫は、大事なことであると考えております。各者、その点では工夫が見られます。

例えば、東京書籍では、章の導入場面で生徒が「見方・考え方」を働かせ、課題をつかむためのワークが掲載され、これから学ぶ学習への興味・関心が高められるよう配慮されています。また、中学生が社会参画している事例の紹介や「18歳へのステップ」などといった身近な切り口で学習を展開することで、学習内容と自分をつなげて意欲的に学べるよう工夫されています。他には、キャラクターが効果的に配置されていることも、工夫の一つと考えます。

帝国書院ですが、「先輩たちの選択」といったコーナーでは、様々な分野で活躍する「先輩たち」の声を掲載し、生徒たちが社会に興味を持ち、社会参画への意識を高めることができるよう工夫されています。

日本文教出版では、さまざまな職業で活躍している人々の声を紹介するコラムや日常生活と関わりのある教材を積極的に掲載し、公民的分野の学習が身近に感じられるように工夫されています。

自由社では、図表や資料が大きく見やすく掲載されていることや、本文中の語句について詳しい解説がなされていることで、意欲的に生徒が学習できるよう工夫されています。

浦野真彦委員
領土問題ですが、北方領土・竹島・尖閣諸島がありますが、これにつきましては、どのような記述がされているのか、各者の違いなどはあるのでしょうか。

教育センター所長代理(山本佐和子)

領土問題に関するお尋ねですが、学習指導要領の内容の取扱いでは、「領土(領海、領空を含む。)、国家主権」については関連させて取り扱い、我が国が、固有の領土である竹島や北方領土に関し残されている問題の平和的な手段による解決に向けて努力していることや、尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は存在していないことなどを取り上げること。」とされております。これらを受けまして、全ての発行者について、日本の領土について複数ページにわたって丁寧に記述されています。

例えば、自由社ですが、我が国の領域について裏表紙にも印刷されており、領土問題に関して歴史的な背景を詳しく紹介した上で、ロシアや韓国、中国の見解についても併記し、我が国固有の領土であることを確認する内容となっています。

育鵬社につきましては、領土・領海をめぐる問題について、本文での記述のほか、コラム「学習を深めよう」などのコーナーで北方領土・竹島・尖閣諸島についての歴史的な経緯を詳しく記述するなど、取り扱っております。

その他の発行者につきましても、全者適切に取り扱われております。

美濃律委員

児童生徒一人一台端末など、ICT教育の推進が図られていますが、そのような観点で特徴的な発行者はありますか。

教育センター所長代理(山本佐和子)

児童生徒一人一台端末など、ICT教育の推進を受けての特徴でございますが、こちらにつきましては、全者踏まえた内容となっております。

東京書籍では「Dマーク」、教育出版では「まなびリンク」、帝国書院では「二次元コード」、日本文教出版では「デジタルマーク」など、それぞれの呼び方があるのですが、こちらにアクセスすることで、学習内容に関連するコンテンツを利用することができたり、多様な資料に案内されたりといった工夫がございます。一人一台端末やネット環境を活用しまして、これから学ぶにあたって、子どもの学習活動、学びを広げていける工夫があると考えています。

樽井弘三教育
他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、社会(公民的分野)について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

浦野真彦委員
選定委員会の調査報告、この場の審議を総合的に考えまして、私は、東京書籍が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育
ただいま、浦野委員から東京書籍が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長
ご異議が無いようですので、社会(公民的分野)につきましては、東京書籍を採択することに決します。

それでは、続きまして地図について審議いたします。報告をお願いします。

【6.地図】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい社会 地図

世界と日本の関係を示すグラフや統計資料を掲載し、世界と日本の関係を多面的・多角的に捉えられるよう工夫されている。世界の各州・日本の各地方のテーマ資料では、地理的分野の探究課題に沿って学習する際に活用できる資料を取り上げ、探究課題の考察を通して理解を深める工夫がされている。

帝国書院 中学校社会科地図

人口や鉱産資源、工業などについて世界との比較・関係を示すグラフ、統計資料を掲載し、世界と日本の関係を多面的・多角的に捉えられるよう工夫されている。歴史・公民的分野でも活用できるよう構成されており、社会的な見方・考え方を働かせながら深い学びにつながる工夫がされている。

樽井弘三教育
報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

深堀基子委員
グローバル化する国際社会の中で本市の子どもたちが活躍するためにも、地図帳を使って、日本だけでなく世界中で起こっていることに興味をもって、日本と世界の幅広い知識を身につけてほしいと考えています。そこで、高槻市で現在使用している現行の地図帳から、追加された部分や変更等があったところで特徴的なところがありますでしょうか。

教育指導課長(青野淳)

各発行者ともに基本的には1.日本と世界の理解が深まる、2.見やすい、3.様々な豊富な資料活用を通じて主体的に学べる、主にこの3点をおさえた地図帳となっております。そのほか、SDGsや環境・資源、人口・貧困問題など、豊富な資料等が新たに掲載されており、現代社会の課題を解決するために自分ができることを考える資料として追加されております。さらに、今年の東京オリンピックは延期となりましたが、オリンピックやパラリンピックなど新しい話題も追加されております。他にも、自然災害・防災への意識を高めるために、防災をテーマとする資料が充実しております。

大きさについては、帝国書院がAB判からA4判に拡大しており、東京書籍と同じ縮尺のページであっても、より広い範囲の地域まで掲載されており、大きく見やすくなっております。

浦野真彦委員
今のお話の中で、教科書の大きさについて変更があるとのことでしたが、見やすいとは思うのですが、使いやすさ等に違いはありますでしょうか。

教育指導課長(青野淳)

各発行者とも、ページ数はどちらも大差なく地図、資料ともに充実しています。

東京書籍は、従来通りの大きさのため、生徒が扱いに慣れているサイズとなっております。「東南アジア・南アジア」のページでは、日本からインドまでを1枚の一般図におさめており、日本からインドまでの距離や、面積や緯度の比較などがしやすいような工夫がされています。

帝国書院は、前回よりも大判化されているため、単純に同じ縮尺でも見やすくなり、各地域の特色がとらえやすくなっており、広い紙面を生かしたダイナミックな鳥瞰図のイラストが特徴的です。また、1ページに掲載できる範囲が増えているため、中心とする地域から周囲の地域までの結びつきが見やすくなっています。また、世界の地図(各州)についても、同緯度・同経度・同縮尺の日本地図が掲載されており、日本との位置関係や大きさなどを比較しやすいような工夫がされています。また、大判化されページ数が33ページ増えていますが、従来よりも軽くて丈夫な用紙を用いられており、重量の増加も25gに抑えており、2冊を比較しても特段重いと感じることはないと思います。

美濃律委員

平成30年度は、地震や台風における大雨、今までには経験したことのないような酷暑、暴風など次々に災害がおこりました。高槻市では、これからも起こるであろう災害に対応できるよう、地図帳を活用しながら自助・共助の力を育成するための防災教育を充実させていくことが必要かと考えています。今回の教科書でも、防災をテーマとする資料が充実していると思いますが、各発行者での取り扱いの特徴などがあれば教えてください。

教育指導課長(青野淳)

先ほども歴史、公民、地理という形での、防災の取り扱いがありますが、地図の教科書につきましても、各発行者とも火山と地震の分布やハザードマップが掲載されており、南海トラフ地震など現代の課題に対応できるように工夫されています。

東京書籍では、2ページにわたり、日本の災害について掲載されております。また、災害の様子を捉えた実際の写真が掲載されており、噴火や津波の被害について、分かりやすく描かれています。

帝国書院については、2ページにわたり、日本の災害についてイラストを用いて描かれており、地震と火山の分布が見開き2ページで大きく描かれています。災害に対する備えが模式図で描かれていたり、身近な課題について考えさせることで、生徒が主体的に取り組む態度を育てることができると考えています。また、各地方の資料ページにも防災に関するコーナーがあり、各地方の火山・地震・水害などの災害の特徴やその備えなどが具体に紹介されており、防災意識を高める学習に役立つことが期待されると考えています。

八十祐治委員
各教科でも、課題を追究したり解決したりする力をつけることは大切だと考えていますが、地図帳では、そのような力をつけるために、どのような工夫がありますか。

教育指導課長(青野淳)

東京書籍では、注目すべき視点のヒントとなるように「注目したい記号」を各地図のタイトルの下に示すことで、子どもたちが主体的に活用できるよう工夫されています。また、キャラクターの吹き出しを設け、資料の読み取りのポイントを示すことで、資料を読み取る力を高め、考察を深められる工夫がされています。

帝国書院では、地図や資料を見ながら問いに答える「地図活用」というコーナーが計94か所、全131問設置されております。探究的な学習課題を示し、地図資料を活用して学習効果がより高められるように工夫されています。また、世界の地図には、同緯度・同経度・同縮尺の日本地図が掲載されています。様々な世界と日本との位置や大きさを比較できる工夫がされています。

深堀基子委員

テレビや新聞のニュースなどで、初めて見聞きした国や都市などについて知らないことがあれば、今は簡単にインターネットで調べることができます。しかし、情報が膨大にありすぎて、中学生にとっては逆に調べにくかったりすることもあるかと思われます。中学生の年代で必要な資料や情報がうまくまとめられたのがこの地図帳だと思います。是非ともこの地図帳を大いに活用して、様々なことを自分で調べてほしいと思いますが、そういった点から各発行者の工夫等はありますでしょうか。

教育指導課長(青野淳)

例えば、初めて調べる国や都市について調べる際には、まず、索引を活用すると思います。これにつきましては、両者とも、世界の地名、日本の地名が、それぞれ五十音順に巻末にわかりやすく掲載されています。中には色を変えたりという特徴もございます。

特に東京書籍では、世界や日本の地名の他に、「資料さくいん」があります。例えば「主な世界文化遺産」、「世界の平均寿命」など、自分の調べたい資料を簡単に探すことができます。また、関連する資料の参照ページを示す「ジャンプ」というマークが提示されており、複数の資料を関連させながら調べることができ、学びの広がりをねらった工夫があります。

また、両者とも、巻頭に地図帳の使い方を丁寧に説明しているページがあります。

特に帝国書院の「地図帳の使い方」という巻頭のページでは、地図帳を開けたらまず生徒が確認をすることとして、「タイトルや縮尺」、「凡例について」や「索引の見方や統計の見方」などが、わかりやすく示されており、地図を活用する際の基本的な事項を小学校との接続も意識しながら理解できるように工夫がされています。

美濃律委員

地図帳は社会の授業の中でも、主に地理の学習の時間に活用されている印象がありますが、地理の授業でどのように活用されているのか、また歴史や公民の授業でもどのように活用されているのか教えてください。

教育指導課長(青野淳)

地理の授業の中では、地図の読図や作図、統計資料や写真などの様々な情報を活用する力を身に付けることが大切になりますが、その際、この地図の教科書を活用していきます。

また、地図帳の中には、例えば各発行者とも「世界の宗教に関する資料」や「歴史の舞台となった場所」など、歴史の分野でも学習するさまざまな歴史的事象について、出来事の背景や結果、結果や影響などを空間的にとらえるための資料が掲載され、多面的、多角的に考察することができます。

公民的分野では、日本の政治の中心である霞が関周辺の官公庁の密集や位置がわかる地図や、若しくは少子高齢化やグローバル化などの日本の今現在の現状と課題の理解を深めるような資料も掲載されており、3年間の社会科の学習全体でこの地図の教科書を活用することができると考えています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、地図について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

深堀基子委員
地図帳を見せていただき、今説明を聞かせていただいて、地域的な特色を視覚的に捉えられる工夫がなされている点や、教科書が大きいので見やすく、教科書が軽い点など、私は、帝国書院の中学校社会科地図が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、深堀委員から帝国書院が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、地図につきましては、帝国書院を採択することに決します。

樽井弘三教育

ここで、午後3時10分まで休憩をはさみたいと思います。よろしくお願いします。

(午後2時58分休憩)

(午後3時10分再開)

樽井弘三教育

それでは、会議を再開したいと思います。

数学について審議いたします。報告をお願いします。

【7.数学】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい数学

「例」「問」「補充の問題」を通して、基礎的・基本的な知識や技能を確実に習得できるようにされている。「深い学び」のページは問題解決の進め方を示し、「深める」では統合的・発展的に考えるきっかけが示されている。

大日本図書 数学の世界

巻頭に「数学の世界へようこそ(学習の進め方)」「ノートの作り方」など、主体的な学習を促すページがある。参照ページの記載があり、見通しをたてたり、解決の仕方を考えたりする過程が大切にされている。「学びにプラス」「力をのばそう」「もっと数学の世界へ」など、発展的な内容を扱っている。

学校図書 中学校数学

各単元の終わりには、振り返りがあり、客観的に評価できる欄が特徴的である。思考力、判断力、表現力等を問う問題では、日常にある問題が設定され、数学と社会がつながっていることが実感できる。また、言語活動を通じて学びを深めていけるような工夫もされている。

教育出版 中学数学

「例」「たしかめ」「問」「基本の問題」で基礎・基本の確実な習得を図れるようになっている。問題発見・解決の数学的活動のプロセスを例示し数学的活動を通して、主体的・対話的で深い学びが実現できるようにされている。

啓林館 未来へひろがる数学

学校での授業を通して学習する「みんなで学ぼう編」と、主体的に学習を進めて学び直しができる教材が掲載されている「自分から学ぼう編」に分かれており、学校での学習内容と家庭などの授業外においての学習内容が分かりやすく構成されている。

数研出版 日々の学びに数学的な見方・考え方をはたらかせるこれからの数学/見方・考え方がはたらき、問題解決のチカラが高まるこれからの数学 探究ノート

数学的活動に「Try」のマ-クがつけられており、数や図形の性質を見いだし、説明し伝え合えるよう工夫されている。章のとびらには、生徒が興味をもつような実際の生活と数学を結びつける題材配置されている。探究ノートが別冊としてあり、見方・考え方を中心に課題設定されている。

日本文教出版 中学数学

既習事項を確認する「次の章を学ぶ前に」というコーナーにて、新しい章の学習をスムーズにおこなうことのできる復習問題が配置されている。数学的に考えを表現するための学び方を示すため、数学的な見方・考え方を具体的に示したりするなど、学びを深める工夫がある。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

浦野真彦委員
新学習指導要領の実施に伴い、数学科において大きく変更した内容はありますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
中学校数学科においては、数学的に考える資質・能力を育成する観点から、現実の世界と数学の世界における問題発見・解決の過程を、学習過程に反映させることを意図して数学的活動の一層の充実を図っております。また、社会生活などの様々な場面において、必要なデータを収集して分析し、その傾向を踏まえて課題を解決したり意思決定をしたりすることが求められており、そのような能力を育成するため、統計的な内容等の改善・充実を図っております。

新学指導要領の改訂により、小・中・高等学校を通じて資質・能力を育成する観点から、従前の「資料の活用」の領域の名称を「データの活用」に改め、領域の構成は「数と式」、「図形」、「関数」及び「データの活用」の四つの領域となっております。「データの活用」が誕生したことにより、「箱ひげ図」などこれまで高校で扱ってきた内容も中学校数学で扱うことになっております。

美濃律委員

新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」と並んで「言語能力の育成」についても注目されています。現行の学習指導要領では「言語活動の充実」が重要視されており、新学習指導要領でも同様に重要視されていると思います。「言語能力の育成」という視点から充実している教科書はありますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表現する力を養うことで、「言語能力の育成」を図ることにつながります。学習したことを活用する課題や、多様な考え方ができる課題、解決のしかたをグループで話し合ったりする課題などを通して身につけていきます。

中でも、学校図書においては、どの単元でも数学的活動が設定され、主体的・対話的に解決していくものとなっており、説明の場面や話し合いの場面を適時設け、言語能力の育成につながる工夫がされています。巻末に、表現する力を身につけようと題して、レポートの書き方、発表の仕方、聞く側のポイントなどが例として示されております。

数研出版におきましては、学習の進め方として、巻頭に聞き方・話し方・グループ学習の仕方などの例として示されており、自分の考えを説明する課題が多く設定することで、言語能力の育成につながるものとなっております。

日本文教出版におきましては、「話す」「聞く」「書く」「読む」といった言語活動を通し、基礎的・基本的な内容の理解を深め、言語能力や数学的な思考力・判断力の育成を目指すものとなっております。

八十祐治委員

数学においては、資料やグラフなどを使って生徒が判断すること、思考を深めていくことが求められていると思いますが、「資料を活用する力」がなかなか身につかないという課題もあると思います。特に今回の教科書改訂の中で、資料を扱う学習について、どのような内容を取り扱っているか、特徴的な発行者があれば教えてください。
教育指導課課長代理(丸山みち子)
先ほども説明させていただきましたが、「資料の活用」という領域の名称が「データの活用」に変わりました。その中で、四分位範囲と箱ひげ図の学習が入ってきており、様々な資料を見比べるということが、2年生の学習の中に入ってきております。

例えば、東京書籍におきましては、コンビニエンスストアの実際のデータを活用した教材で、過去5年分の販売数のデータを用いて、花見の時期にどの商品がよく売れていたのかを分析し、その結果をもとに、自分が店長だとしたらどの商品の仕入れを増やせばよいかを判断できる内容が掲載されております。

学校図書におきましては、単元の導入で調べ学習の場面を扱い、日本各地の年間の降水量のデータについて分析がされており、日常生活と結びつけて考えさせる工夫がされております。 

教育出版におきましては、道路の安全対策に統計データが活用されている話題を紹介し、数学と日常生活を結びつけて考えられるよう配慮されております。

深堀基子委員
日常生活に結びつく問題がどの発行者でも取り扱われていますが、数学を日常生活や他教科と関連させて「活用する力」を育成する学習活動が充実している発行者はありますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
数学的活動の楽しさや数学のよさは、数学が生活や他教科等の学習において生かされることなどを通して実感されます。それゆえ、数学が日常生活や社会生活において、また他教科の学習やその後の人生において必要不可欠なものであることに気付かせることが大切であるといわれております。

その中で、東京書籍におきましては、水を沸騰させるときにかかるガス料金を考える活動や二酸化炭素の排出量の削減に関わる題材を取り上げ、数学と日常生活との関連を実感できるよう工夫されております。

大日本図書におきましては、社会科との関連として、選挙を題材として取り上げ、10代の選挙への投票率を扱った問題が設定されております。

啓林館におきましては、理科との関連として、雷の音の伝わり方やばね、人工衛星の太陽電池パネルにも使われている「ミウラ折り」、食塩水の濃度を紹介するなどの工夫がされております。

美濃律委員

学んだものを「活用」することが重要だということはわかりますが、「基礎・基本」もとても大切だと思います。基礎・基本の定着については、小学生の頃は毎日宿題があって学習習慣が身につきやすかったと思いますが、中学生になれば自ら計画を立てて学習を進めていき、「自学自習力」を身につけていってほしいと思います。ただ、中学校では算数から数学に変わり、内容が難しくなっているので、一人ではなかなか問題が解けないことも考えられます。その点について、新しい教科書では生徒の「自学自習」についてどのような配慮や工夫がされているのか、特徴的なものがあれば教えてください。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
各者とも、新しい教科書でも自学自習力の視点では、問題が解けない時にどこを振り返ればいいのかということが教科書の側注に書かれていたり、目次の横の部分に振り返る学年等が書かれていたりと工夫がされております。そのことによって生徒が家庭で学習する際には、そのページを参考にしながら、既習事項を振り返ることができるような工夫がされております。

学校図書では、論理的・統合的・発展的に考察することができる吹き出しや補足説明が随所に散りばめられており、自学自習力を高める工夫がされています。習熟度に合わせて、基本・応用・活用、計算力を高めようなどが設定されています。また日常につながる思考力を働かせる問題も、各自の興味や単元に合わせた問題が記載されております。

教育出版におきましては、巻末の「補充問題」ではさらに習熟、反復練習することができます。その中の「実力アップ問題」は難易度の高い問題、「数学の広場」は学習したことを活用して深める問題が設定されております。

深堀基子委員
今、自学自習ということで、お話しいただいたのですが、数学は保護者目線で見ると「家庭学習」で子どもに教えるハードルが高い教科だと思います。子どもが小学生の間は算数の宿題を見てあげることができるのですが、中学生の数学は、子どもと一緒に教科書を見てもわからない状態になることもあります。一緒に読み解いてできるような工夫があれば、保護者も家庭学習に取り組むことができると思いますが、そのような工夫はありますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
各者とも教科書内に問題を考える上でのポイントやどこを振り返ったらいいのかなどの工夫がなされております。単元の前に既習事項の復習のための読み物や問題が出ており、自学自習や家庭学習ができるような工夫がちりばめられております。

中でも、東京書籍におきましては、巻末に「補充の問題」が設定され、授業で学んだことをくり返し練習するために、問題の横に、「補充の問題」へのリンクペ-ジが示されており、家庭学習にもつながる工夫がされていると考えております。

学校図書におきましては、教科書内に吹き出しや補足説明が随所に散りばめられており、家庭学習などで生徒が一人でも学習できるよう配慮がされております。

啓林館におきましては、章末問題「学びをたしかめよう」、「学びを身につけよう」を利用して、その章での学習を確認することができます。また、「自分から学ぼう編」を活用し、自主的な学習を家庭などの授業外でも取り組むことができるようになっております。

樽井弘三教育

小学校では算数、中学校では数学と名称が変わります。当たり前のように、我々は馴染んでいるのですが、子どもたちは小学校では算数と呼んで、中学校では数学と呼んでいます。そこがスムーズに円滑に移行できるのかどうかというのが大きいですね。各教科書では、算数から数学への移行ということで、子どもたちが学びに向かう力、意欲的に数学に取り組もうという、そういう工夫をされていると思うのですが、どんなことがあるでしょうか。それを紹介していただきたい。

それと、算数と数学の名称がなぜ違うのかも、少し確認をしていただきたい。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
まず、学びに向かう力というところでございますが、各者とも数学的活動が充実し、意欲をもって問題に取り組めるような工夫がございます。また、学んだあとに日常生活へかえせる問題の設定となっております。まず、子どもたちの数学を学ぶ楽しさとかそういうところについて、小学生の段階はかなり肯定的に、算数は好きであると回答している子どもは多いです。中学生になると好きであるという部分が下がってくるという状況がまずあります。その部分で、どうその部分を埋めていくのかというところで、数学のよさというところを気づくような、生活と結びつくような課題を多く入れていっているというところが、今新たな教科書の中にも、含まれているということで回答させていただきます。

小学生のときは算数で、中学生になると数学になるということに関しましては、小学生のころはより具体的な内容になっている、答えを求めるというところを主に、展開されているかなと考えています。一方で、数学という形になると、その学び方、答えにいきつくプロセスというところを重視しているというところになりますので、小学生で学んだ算数の知識・技能を生かしながら、数学に展開していくということで考えております。

樽井弘三教育
他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、数学について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

八十祐治委員
私は、この場の審議から考えまして、学校図書が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育
ただいま、八十委員から学校図書が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、数学につきましては、学校図書を採択することに決します。

それでは、次に理科について審議いたします。報告をお願いします。

【8.理科】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい科学

巻頭の「探究の流れと教科書の使い方」では、言語能力の育成や表現力などの観点が強調されている。「Before&After」は、素朴な疑問が、章の本質を捉える力へと変容したことを実感できる構成である。各節は「問題発見」から「活用」まで8段階の展開で、深い学びへとつなげられている。

大日本図書 理科の世界

単元の初めは、学習内容や既習事項の確認などがあり、見通しや学習内容の連続性を意識できる構成である。そして、「まとめ」で基礎基本の定着、「単元末問題」 および「読解力問題」で発展的な学習、さらには「探究活動」で言語能力や表現力を養うことで、生徒の学びが深まる流れとなっている。

学校図書 中学校科学

巻頭の「理科のトリセツ」では、「探究の進め方」「授業を受けるコツ」が記載され、生徒が一年間の学習に対して一貫性をもって取り組めるようになっている。各章冒頭および章末には「Can-Do-List」を活用し、評価の3観点にそって目標を意識して学習し、振り返りできるようになっている。

教育出版 自然の探究 中学理科

「なぜ理科を学ぶのか」「探究の進め方」「さあ、探究の世界へ!」という流れを丁寧に説明することから教科書が始まっており、見通しをもって学習に入ることができる。資料性の高い写真で、興味を惹く工夫がされている。日常生活から疑問を見つけ、探究活動につなげるつくりになっている。

啓林館 未来へひろがるサイエンス

各単元、「疑問」から「課題」を見つけ、最後は「考察」「表現」との決まったプロセスが示されており、見通しをもって学習できる。「探Q実験」のコーナーでは、「話し合ってみよう」や「表現してみよう」などの言語活動を通して、理科の見方・考え方をはたらかせるようになっている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

深堀基子委員
理科の学習は、私たちの日常生活や身の回りの自然に関連することが、とても多いと感じています。学習の導入時に、日常生活と関連づけて課題意識をもたせることが、その後の学習意欲へとつながると考えますが、そのような点で工夫が見られる教科書はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

委員仰せのとおり、「日常生活との関連を重視すること」は、今回の学習指導要領の改訂のポイントでもあります。どの発行者も各単元のはじまりのページには生徒の関心を高め、日常生活とのつながりを意識することができるような写真が掲載されており、生徒が、課題意識をもって学習に向かうための工夫が見られます。

この他特徴的なものといたしましては、例えば、東京書籍では、単元の最初のページには写真にあわせて、吹き出しのイラストで「なぜ」と問いかける場面、次の頁には、「これまでに学んだこと」と「この単元で学ぶこと」を整理してまとめるといった工夫が見られます。

また、教育出版では、各章で学んでいくことに見通しを持たせるための工夫、この他には各章の初めには小学校までさかのぼった既習事項が「これまでの学習」という項目でまとめられ、これからの学習課題に関連性をもたせるという工夫が見られます。

啓林館では、不思議から始まる単元導入を意識し、興味をもって学習に入るための工夫や、写真や図をダイナミックにレイアウトすることで学習意欲を高めるような工夫が見られます。

浦野真彦委員
実験や観察の数が教科書によって違うと思いますが、無理なくカリキュラムが組める内容となっていますか。

教育センター所長(藤田卓也

実験や観察の数とカリキュラムについてでございますが、各発行者とも、教員が行う演示実験も視野に入れた上で取捨選択を行うこととなっております。そのため、観察・実験などを取りあげている箇所について、発行者により多少の差はございますが、カリキュラム上無理なく取り組めるものとなっております。

また、どの発行者においても年間授業時数の90%以内で履修できるようになっておりますが、その中でも特徴的なものとしては、学校図書は、65%程度でゆとりを持った時間配分となっております。必要なことを端的に学習する構成であるため、実情に応じた取り組みが可能で、探究活動や基礎基本の定着に時間をかけることも想定できることが特徴となっております。

美濃律委員

高槻の生徒の課題と、その課題の克服につながるという観点で有効である教科書はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

高槻の子どもの実態としてでございますが、理科の調査が行われました平成30年度全国学力・学習状況調査では、「知識」および「活用」について、全国平均を上回る結果となったほか、令和元年度大阪府チャレンジテストにおきましても大阪府の平均を上回る結果となりましたが、一方で3年生の生徒に対するアンケートにおきまして、「自分の予想をもとに観察や実験の計画を立てている」という質問について、否定的な回答が約23%ございました。これらのことから、基本的な「知識」とその「活用」についての定着を、当然のこととして、図ったうえで、さらに目的意識をもって観察実験が行えるような工夫のある教科書が良いと考えられます。これらの点におきましては、どの発行者も、気づきや課題から取り組む工夫がありますが、その中でも2年生の探究の重点項目である「仮説を考える」という場面を一例に特徴的な発行者を申し上げますと、

大日本図書では、「計画を立てよう」のマークがあり、生徒が対話しているイラストを用いながら自分で予想を立てて実験にすすめるように促しております。また、「結果から考えよう」でもしっかりと事後学習に取り組む工夫が見られます。

学校図書では、課題を明らかにした上で、教員や生徒が対話しながら仮説や計画を立てる場面がありますが、イラストの中の空白の吹き出し部分に、自分の仮説や計画を考えさせるような場面があり、授業でも取り入れやすく、工夫されております。

教育出版では、実験を行う前に、「仮説を立てる」、「計画を立てる」というマークを用いて、それぞれの場面で対話するイラストを用いて考え方が示され、仮説をもとに実験の計画を立てていく工夫がされています。

八十祐治委員
新学習指導要領においては、深い学びの鍵として「見方・考え方」を働かせることが重要とされていますが、理科の見方・考え方を働かせるための工夫としてどのような点がありますか。

教育センター所長(藤田卓也

理科の「見方・考え方」につきましては、学習指導要領解説では「自然の事物・現象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え、比較したり、関係づけたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」と比較したり関連付けたりといったことで強調されております。また学年別におきましては、1年生では、「自然の事物・現象に進んで関わり、その中から問題を見出す」、2年生では、「解決する方法を立案し、その結果を分析して解釈する」、3年生では「探究の過程を振り返る」というように整理されております。以上の点につきましては、どの発行者においても意識されたつくりとなっておりますが、特に大日本図書、学校図書、啓林館では、各学年の重点項目が本文中においてもわかりやすく示されているという特徴がございます。

一例を申し上げますと、大日本図書におきましては、1年生の問題を見出すということに関連しまして、「問題を見つけよう」といったものが赤色で強調されるという特徴がございます。この他に2年生、3年生の「計画を立てよう」「結果から考えよう」も区別をしてわかりやすくするといった工夫が見られます。

学校図書では、1年生の各単元の初めに日常生活から問題発見を意識して学習に取り組むための工夫といったものがあります。また、2年生、3年生の教科書におきましても各学年の重点項目に沿ってここをしっかりということで、色分けをして示しております。

啓林館におきましても同様に、探究実験という場面におきまして、学年に合わせまして、ここをしっかりというわかりやすく示す工夫が見られるのが特徴となっています。

浦野真彦委員
経験の浅い先生が増えていると思うのですが、その上で、使いやすさ、指導しやすさという点で工夫された教科書はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

使いやすさや指導しやすさについてでございますが、どの発行者におきましても新学習指導要領に示された理科の資質・能力が育まれるよう、配列に工夫がされております。今回、とくに探究の過程が重視されていることから、日々の授業においても授業者や生徒がそれを意識して取り組めることが必要であると考えられます。その点についても各者工夫が見られます。

一例を申しますと、学校図書では、巻頭に、各学年約15頁にわたりまして、どうやって理科を学ぶのかというコーナーや、授業を受けるコツなどが解説されています。また、各章の初めと終わりの自己チェックの項目である「Can-Do List」でも学習指導要領が示す3つの資質・能力を意識させる工夫がされています。

教育出版では、巻頭に、探究のフローチャートや、そのフローチャートの各項目のポイントが示されているほか、「考察」の項目ではその方法が具体的に示されております。本文中においてもフローチャートのマークが順序立てて用いられ、探究の流れに沿って学習できるような工夫があります。

啓林館では、「サイエンス資料」という特集ページに探究活動や話し合い活動について示されているほか、QRコードのコンテンツが豊富で、必要な動画やアニメーションなどを見せたりすることができ、生徒の学習支援と併せて、教員の指導においても効果的に活用できる内容になっております。

美濃律委員

目的意識をもって主体的に観察・実験を行うために各教科書でどのような特徴があるのかということと、また、理科室での事故防止および安全の配慮はどのように扱われているのか、特徴的なところがあれば教えていただきたい。

教育センター所長(藤田卓也

まず、目的意識をもって主体的に観察・実験を行うための工夫についてですが、どの発行者においても小単元の導入から疑問を投げかけ、課題として捉えてから実験・観察へとつなげております。

単に観察や実験を行うだけでなく、特に「気づき」を意識して実験の課題に取り組ことができる工夫としまして、特徴的な発行者をあげますと、東京書籍では、問題発見から課題を明らかにし、実験に取り組める工夫がなされています。学校図書では、「気づき」から始まるステップが示され、実験の前には、「なぜ」という疑問から課題を明確にして実験に取り組む工夫がみられます。また、教育出版では、疑問を見つけ、話し合い、課題を決めてから実験に取り組む工夫がされています。

次に、事故防止および安全の配慮についてでございますが、理科における安全教育について、各発行者とも理科室の使い方、実験前から実験後の注意点、応急処置や廃液処理についてまとめられております。

実験のページについて、注意点を赤字で示す工夫をしているのは、東京書籍、啓林館、黄色のマークで示しているのは大日本図書、学校図書、教育出版です。また学校図書では、赤で「ストップ」と目立つように書かれております、教育出版では、「禁止」マークと「注意」マークを使い、段階的な強調が見られます。

各者とも安全教育にはそれぞれ工夫しながら配慮しております。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、理科について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

美濃律委員
これまでの審議を考えまして、「Can-Do-List」を活用し、目標を意識して学習し、振り返れるところや、探究のページが設定され、既習事項を深化させ、目的意識や目標を持って取り組める学校図書の中学校科学が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、美濃委員から学校図書が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、理科につきましては、学校図書を採択することに決します。

それでは、続きまして音楽(一般)について審議いたします。報告をお願いします。

【9.音楽(一般)】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

教育出版 中学音楽 音楽のおくりもの

表現及び鑑賞の活動を通して、音楽的な見方・考え方を働かせて主体的に学ぶことや、聴きとったことを話し合うなど、協働的に学ぶことが重視されている。学びのポイントで指導事項と音楽的な見方・考え方の取り扱いを全学年共通に示し、効果的な学習が展開できるように工夫されている。

教育芸術社 中学生の音楽

「学習内容」のページにより、各教材で習得する資質・能力が整理されている。また、学習目標・具体的な学習活動・共通事項に示される要素や「用語・記号」をパターン化して掲載され、「深めよう!音楽」のコーナーでは課題意識を持って学びに向かえるよう、学習の手順や観点等が明確に示されている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

深堀基子委員
さまざまな家庭背景がある中、早い段階から音楽に親しんできたり、そうでなかったりと、音楽に対する興味関心は各家庭の状況によって様々だと思います。音楽が苦手であったり、興味関心が薄かったりする生徒でも、楽しく音楽に参加してほしいと思っています。そういった視点で、誰もが音楽の創作活動や音楽表現に参加しやすくなるような工夫がされている点はありますか。

教育指導課長(青野淳)

各発行者ともに、進んで学び合う創作や歌唱の活動が展開できるような工夫がされています。また、協働的な活動によって、音楽表現をすることで、学習をさらに深める工夫がされています。

教育出版では、「音のスケッチ」というコーナーで、旋律をつくることと音楽を構成することの2つの学習に対応しながら、生徒が楽しく分かりやすく創作活動が行えるよう工夫されています。その他にも3年間の系統性や発展性を踏まえ、様々な体験的な創作活動が展開できるよう工夫されています。

教育芸術社では、「リズムゲーム、リズムアンサンブル、リズムチャレンジ」「My Melody」「Let’s Create」というようなページが各学年に設けられています。「My Melody」は、旋律を主体的に扱い、「Let’s Create」では、曲の構成を意識して作っていく教材になっており、生徒たちの状況に応じ、段階的に学習を深められるよう工夫されています。また、学びの手順もスモールステップで示され、生徒たちにとって、分かりやすいような工夫がされています。

浦野真彦委員
音楽科の学習では、合唱や合奏をはじめとして、子どもたち同士が力を合わせて、音楽に取り組む活動が多いと思います。そのため、歌ったり、曲を鑑賞したりと教科書を開いたまま活動することが多いと思うのですが、そういった点で、各発行者はどのような工夫がありますか。

教育指導課長(青野淳)

各発行者とも、「歌唱」「創作」「鑑賞」と各領域・分野ごとにそれぞれ同じ色でまとめられ、各題材のはじめのページに、色の帯で学習目標を示すなどの工夫がされています。

教育出版では、見開きページの左端に関連する曲を示し、音楽に関する用語や記号を右側に示し、見通しを持って効果的に子どもたちが学習を展開できるような工夫がされています。

教育芸術社では、「何を学ぶのか」という「学習目標」が示され、その学習目標に迫るための具体的な「学習活動」がわかりやすく示されており、主体的に学習に取り組みやすいような工夫がされていると考えています。音楽に関する用語や記号を見開きページの右側に示され、左下には、音楽的な見方・考え方を働かせる際の大切な視点となる「音楽を形づくっている要素」が教材ごとにこまめに示され、より充実した言語活動につなげる工夫がされています。

美濃律委員

学習の基盤となる言語能力を育成するために、各教科等における言語活動の充実が高槻市の教育努力目標の「きめ細かな学習指導の充実」の具体的目標の中にも掲げられておりますが、音楽科における言語活動の充実の視点から見て、各教科書でなにか特徴的なものがあれば教えてください。

教育指導課長(青野淳)

音楽につきましても、生徒たちが聴覚を中心とした感覚器官を通して音楽や音を客観的に「聴き取ったこと」、音や音楽の雰囲気などの子どもたち一人一人が主観的に「感じたこと」をそれぞれ言葉で表すことが非常に大切になっています。各発行者ともに「聴き取ったこと」や「感じ取ったこと」等を発表したり交流したりすることは協働的な活動で展開できるように工夫されています。

教育出版では、音楽や演奏のよさ、価値を考えたりする学習を展開するために、キャラクターによって具体的な内容が示されております。また、「話し合おう」というコーナーで生徒が「聴き取ったこと」「感じたこと」を言葉で書き込む欄があり、生徒が自分の考えをまとめやすい工夫がされています。

教育芸術社では、「音楽を形づくっている要素」をアイコンだけではなく、共通事項に示された、例えば、リズムであるとか、旋律、強弱などの文言で示すことで、言語活動の充実を図る工夫がされています。さらに、「深めよう!音楽」や「曲のよさをプレゼンテーションする」というページが掲載されています。「聴き取ったこと」や「感じ取ったこと」を言葉で表現できるよう、楽譜の例や図、吹き出しを用いて説明されており、それらを活用することで、言語活動を取り入れながら学習できるように工夫されています。

八十祐治委員
最近では、中学生の音楽への接し方が変化してきているように思えます。例えば、インターネットを通して多様な音楽にアクセスすることができ、個人で楽しむ機会のほうが多くなっているように思います。また、これからの時代ですが、AIが音楽を作ったり、演奏したりすることが当たり前になるかもしれません。そのためにも、中学生には感性を働かせ、学び合いを通して創造的な音楽表現や音楽鑑賞をしてほしいと考えています。そこで、各発行者における主体的・対話的で深い学びの実現に向けて工夫している点や特徴があれば教えていただきたい。

教育指導課長(青野淳)

各発行者ともに、主体的・対話的で深い学びの実現に向けて、進んで学び合う活動が展開できるように工夫されています。

教育出版では、「Active」のページや「話し合おう」というコーナーで、聴き取ったり、気づいたりしたことを自分で記録して、自分が感じ取ったことと音楽の構造との関わりなどをまとめてクラスで交流できるよう工夫されています。

教育芸術社では、「深めよう!音楽」では、聴き取ったことや感じ取ったことをワークシートに書き込んで整理することができる工夫が見られます。スモールステップに沿って学習を進めることで、主体的・対話的で深い学びに向かうことができるよう工夫されています。また、専門家や演奏家のメッセージが豊富に掲載され、自分の考えをより深めたり、広げたりすることができるような工夫がされています。

樽井弘三教育

教育格差という視点で、学校教育を取り巻く大きな課題であると思っています。そういうことからすると、音楽というのは、家庭の経済的文化的な背景の影響を受けやすい教科だろうと思っています。そういう視点で各発行者はその是正に向けてどんな工夫をされているのか、少し紹介をしていただきたい。

教育指導課長(青野淳)

いま中学校の生徒たちにとりましては、インターネットの発展により、自分の聞きたい好きな曲に触れやすい状況になっています。一方、聞きたい曲に偏りが生じ、経済的文化的な背景から、クラシック音楽などの幅広い音楽に触れる機会には差が生じてきていると思っています。各発行者ともに、音楽や芸術の多様性を伝える各界の著名な人物、楽器や舞台芸術を取り上げるなど、音楽に親しみやすくなるような工夫がされています。鑑賞領域では、3年間を通して我が国の様々な伝統的な音楽や、ビバルディの「春」、シューベルトの「魔王」などの西洋音楽を取り上げられており、作品の背景にある文化や風土などにも触れさせることで、そういったPopな音楽だけでなく、子どもたちの幅広い音楽鑑賞に発展させていくような工夫がされています。

各発行者の鑑賞領域の取り扱いを見ますと、例えば、先ほど言いましたビバルディの「春」において、2者を見ていきますと、教育出版では、曲の構成に関して、専門的な語句を取り扱うだけでなく、その語句が示す旋律を楽譜で見やすいように着色するなどの工夫がされています。知覚と聴覚で感じとりやすくなるような工夫がされ、音楽に親しむ機会が少ない子どもたちにとっても、触れやすい工夫がされています。

教育芸術社では、ビバルディが活躍した年代が、日本の時代ではどの時期にあたるのか、こういったところについては、小学校での既習学習がありますので、そういった日本の年表を示し、視覚的にわかりやすいような工夫がされています。また、今回より新しく設けられた「深めよう!音楽」というコーナーでは、「聴き取ったこと」「感じ取ったこと」をワークシートで整理しやすいように工夫されており、初めて触れるクラシックの曲でも、どのようなポイントで考えればいいのか、聴き取ればいいのか、発問やキャラクターの吹き出しで示し、わかりやすいように工夫されています。

このように、ビバルディの「春」のような初めて出会うクラシック音楽に触れる際も、音楽鑑賞の視点を学ぶことにより、生涯にわたり音楽文化に親しむ態度を育むことができるような工夫がされています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、音楽(一般)について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

深堀基子委員
教科書を見せていただき、今説明を聞かせていただきました、「深めよう!音楽」のページで主体的で対話的な学びを展開できるような工夫がされている点や、歌唱曲が多いのと、曲が比較的新しい感じがした点などで、私は、教育芸術社の中学生の音楽が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、深堀委員から教育芸術社が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、音楽(一般)につきましては、教育芸術社を採択することに決します。

続きまして、音楽(器楽合奏)について審議いたします。報告をお願いします。

【10.音楽(器楽合奏)】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

教育出版 中学器楽 音楽のおくりもの

各楽器の学習は、基本的な奏法を生かし他者と合わせて表現を工夫する多様な教材が掲載されているとともに、音楽から喚起されるイメージや雰囲気、感じ取った曲想や考えたことの交流、表現の工夫を通して言語活動や協働的な活動が促されるような配慮がされている。

教育芸術社 中学生の器楽

巻頭には、学習内容や教材を示した学びの地図となる内容が配置され、各教材でどのような音楽の力を身に付けられるのか確認でき、それらを育成できるよう学習目標、具体的な学習活動、音楽を形づくっている要素と分かりやすい紙面構成になっている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

美濃律委員

世界にはギターやピアノ、バイオリンなどさまざまな楽器や音楽があります。子どもたちには様々な音楽文化に触れながらも、日本の伝統的な楽器にも親しみを感じてもらいたいと思います。現在の音楽科の授業では、どのような和楽器がどの程度取り扱われているのかを教えていただきたい。

教育指導課長(青野淳)

学習指導要領では、3年間のうちに1種類以上の和楽器を取り扱うことになっております。各発行者とも、日本の楽器(和楽器)としましては、篠笛、尺八、箏、三味線、太鼓などが取り扱われています。

浦野真彦委員
音楽科の授業では、「歌を歌う」「曲を鑑賞する」だけでなく、楽器も演奏するわけですが、取り扱う楽器としてはリコーダーが多いと思います。音楽が得意でない子も楽しく楽器を演奏してもらいたいと思いますが、各発行者では、取り扱われることが多いリコーダーについて、何か特徴なところはあるでしょか。

教育指導課長(青野淳)

リコーダーの演奏につきましても、各発行者ともに、「各部の名称」「リコーダーの指穴の番号と指番号」「演奏する際の姿勢と構え方」など、図や写真を用いて、分かりやすく説明がなされています。そして、教材ごとに新しく扱う音については、指使いをイラストでわかりやすくページの端に示されており、その都度、生徒が確認しやすくなっております。

教育出版では、基本的な奏法が身に付けられるように、学習目標を「学びのねらい」として、そして、学びのポイントが示されています。身につけた技能を生かして「まとめの曲」が表現できるように、段階的な構成となっています。

教育芸術社では、「左手による演奏」「両手による演奏」「高音を奏でるサミングという奏法」「半音高い音、低い音」と段階的で視覚的にもわかりやすい構成となっています。とくに、「Lesson〇〇」と示され、Lessonは1から4まであるのですが、子どもたちにとっても段階的な構成がわかりやすい工夫がされています。Lessonごとにポイントが示されており、子どもたちが段階的な学習の見通しを持ちながら学習できる工夫がされています。

深堀基子委員

先ほども経済格差という話が出ていたのですが、幼いころから音楽や楽器に触れあう機会にかなり差があると思います。また、中学生が学校以外で楽器を演奏したりする機会そのものが少ないと思います。そういった中で、すべての生徒、とくに楽器演奏が得意ではない生徒でも、興味・関心をもって演奏してみたいと思えるような工夫はされているでしょうか。
教育指導課長(青野淳)

各発行者ともに演奏家の写真とともに、その楽器の魅力を伝えるメッセージが掲載されています。また、各楽器の歴史などもわかりやすく説明されています。

具体的には、教育出版では、比較的易しい合奏曲を集めた「Let's Play」、後半はグレードを上げた「Let's Try」という形で、段階を踏みながら、他の生徒とともに多様な合奏に取り組むことができるよう工夫されています。

教育芸術社では、各楽器のページにおいて、基礎的な技能を習得できるよう、段階的な構成になっています。また、合奏の曲として、「笑点のテーマ」、ディズニー映画の「美女と野獣」、「世界に一つだけの花」、箏の演奏による井上陽水の「少年時代」、篠笛の演奏による「もののけ姫」など、生徒たちがよく知っているような楽曲を紹介し、様々な楽器で演奏する際に、興味関心を持って取り組めるような工夫がされています。

八十祐治委員
他の教科でも聞いていますが、この音楽の器楽合奏の教科書の中で「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、工夫されている点があれば教えてください。

教育指導課長(青野淳)

教育出版では、各題材で学習のポイントが示され、基礎的な練習曲と「まとめの曲」という流れが示され、学習活動が展開されやすいような工夫がされています。また、「音のスケッチ」というコーナーでは、個人やグループで創意工夫しながら表現するよう工夫されています。その他にも、各楽器の共通性と固有性を考える「何が同じで、何が違う?」のページにおいては、書き込み欄が設けられており、自分の考えなどをまとめ、互いの見方や考え方を知り、さらに言語活動を進めていけるような工夫がされています。

教育芸術社では、各教材において、目標とする学習内容やその方法、演奏や学習に必要な情報を明確に示し、「〇〇してみよう」という学習目標、その目標に迫るための具体的な練習のポイント、これを活動文と言っていますが、そういったものがわかりやすく示されています。また、課題意識をもって友達と対話・協働しながら学びを深められるよう、考える視点が例示されています。具体的には、「深めよう!音楽」のページにキャラクターによる吹き出しにより思考の例が明示されており、学習が進めやすくなっています。曲に対する自分の考えをもち、他者と交流して器楽の学習を深める、そういった工夫がされています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、音楽(器楽合奏)について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

浦野真彦委員
2者それぞれ良い点はありますが、この場の審議から判断しまして、私は、教育芸術社が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、浦野委員から教育芸術社が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育

ご異議が無いようですので、音楽(器楽合奏)につきましては、教育芸術社を採択することに決します。

続きまして、美術について審議いたします。報告をお願いします。

【11.美術】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

開隆堂 美術

各分野の学習の導入において、造形的特徴のある作品とともに発想や構想のヒントとなる制作過程を紹介することで、造形的な見方、考え方を深めながら制作にとりくむ流れが設定されている。加えて、教科書が大きく、美しく見やすい写真や図版が掲載されており、興味関心を喚起する内容になっている。

光村図書 美術

題材ごとに、生徒が試行錯誤している制作過程の写真やアイデアスケッチなどを多く掲載するなど、表現の幅が広がるよう配慮されている。加えて、生徒の興味を引くようなレイアウトが工夫され、鑑賞図版では原寸印刷の見せ方や手触りの異なる紙質を使い、より本物に近い風合いを実感することができる。

日本文教出版 美術

各題材において、イメージしやすい題材名や造形的な視点について問いが示されており、生徒が自ずと造形的な見方、考え方を働かせながら活動できるように工夫されている。加えて、短時間題材の掲載など生徒の実態に合わせた多様な授業展開を行える配慮がある。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

八十祐治委員

発行者ごとの特徴により、授業の進め方に違いが出てくるのでしょうか。また、もし違いがあるならば、授業の導入場面において具体的にどのような特色があるのでしょうか。
教育指導課副主幹(水口裕介)

発行者ごとの特徴により、授業の進め方、とくに、導入場面というところのお尋ねですが、発行者ごとに、紙面構成や題材設定など特色がありますので、授業展開への影響はあるものと考えています。

授業の導入場面で申し上げますと、開隆堂では、図版が大きく、授業の導入で使いやすい工夫があります。また各分野の最初には「絵や彫刻でまなぶこと」「デザインや工芸でまなぶこと」などのページが特別に設けられ、学びが深まっていく工夫がされています。

光村図書の場合では、それぞれの題材の最初には、関係する鑑賞作品を掲載し、鑑賞から制作活動に進むことができるよう配慮されています。表現と鑑賞の資質・能力を相互に働かせながら活動を進めることができる工夫があり、新学習指導要領の改訂のポイントに沿った授業計画が立てやすいよう配慮がなされています。

日本文教出版では、図版だけでなく、わかりやすい言葉で題材についての説明が掲載され、スムーズに制作活動に進むことができる工夫があります。

美濃律委員

新学習指導要領の改訂のポイントでは「表現と鑑賞の資質・能力を相互に関連させながら育成していく」という点に触れていましたが、その点における各教科書の特徴は何かございますか。

教育指導課副主幹(水口裕介)

表現と鑑賞の資質・能力の相互の関連についての各者の特徴でございますが、開隆堂では、各題材において、扉のページに表現題材の導入として多様な作家作品を取り扱い、「表現」と「鑑賞」が相互に関連するように2ページに収まるように構成されています。

光村図書では、一つの題材の中で、「表現」と「鑑賞」を一体的に学習しやすいよう、学びの流れをわかりやすく配置しており、授業者にとって授業計画が立てやすく、生徒にとっては授業の流れがわかりやすくなっています。また、系統的に学びやすいという特徴もございます。

日本文教出版では、題材によっては、表現と鑑賞が相互に関連していることを表すインデックスを配置しており、指導計画を立てやすくしています。

深堀基子委員
表現や鑑賞の活動を行う際に、生徒には興味をもって活動に取り組んでほしいと思いますが、各発行者、生徒の興味を引き出すような配慮はありますか。

教育指導課副主幹(水口裕介)

表現や鑑賞の活動の際に、生徒の興味を引き出す配慮等についてでございますが、開隆堂では、漫画作品を7作品掲載し、それぞれの物語を特徴づけるコマが掲載されております、生徒の身近にあるものを美術のテーマとすることで、生徒が導入段階で興味を持つような題材も取り扱っていることが特徴です。

光村図書では、「授業における発想や構想の方法がイメージしやすく制作の見通しが持てる」という構成になっており、構想を練り試行錯誤しながら制作する過程の写真等が多く掲載されています。また、「鑑賞―表現―鑑賞」という「授業が見える紙面」構成により、授業者にとっては授業計画が立てやすく、生徒にとっては、分かりやすくて表現の幅が広がるような配慮がされているところが特徴です。

日本文教出版では、生徒が関心を持つような、漫画作品を3作品、それから生徒が描いた漫画を掲載しており、自ずと造形的な見方、考え方を働かせ活動できるような文章や写真の内容となっているところが特徴です。

浦野真彦委員

今回の学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業がポイントとなっていますが、美術科の教科書において、生徒同士が対話をしながら学習活動に取り組みやすいような工夫などはありますでしょうか。
教育指導課副主幹(水口裕介)

生徒同士の対話活動についてですが、開隆堂では、協働や協力をして活動する題材を多く取り上げており、生徒同士のコミュニケーションや言語活動が深められるよう工夫がされています。

光村図書では、各題材の最初に鑑賞図版を掲載し、問いかけを設けることで生徒が主体的に作品に鑑賞し、そこから対話が生まれるよう工夫がされています。また、他者と意見交換しながら作品を作る様子も掲載されており、対話を通じて活動に取り組みやすいよう配慮されています。

日本文教出版では、造形的な視点について具体的な問いかけが掲載されており、生徒がコミュニケーションをとりながら造形活動を行う様子が紹介されており、他の生徒との対話のきっかけとなるよう工夫されています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、美術について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

美濃律委員
3つの教科書ともいろいろな工夫がされていると感じました。そのうえで、制作過程の写真やアイデアスケッチなどが多く掲載されていて、表現の幅が広がるように配慮されていたり、原寸印刷の見せ方、手触りの異なる紙を用い、本物に近い風合いを実感できるように工夫されている光村図書の美術が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、美濃委員から光村図書が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、美術につきましては、光村図書を採択することに決します。

続きまして、保健体育について審議いたします。報告をお願いします。

【12.保健体育】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい保健体育

「活用する」のコーナーでは、互いの意見を共有することで言語能力の育成が図られるとともに、それまでに習得した知識及び技能を活用して課題を解決することで、思考力、判断力、表現力等を育み、深い学びが実現できるよう工夫されている。

大日本図書 中学校保健体育

今日的かつ将来的な課題を重点的に学ぶことができ、実生活における健康の保持増進・改善につながる内容の取扱いになっている。「つかもう」「話し合ってみよう」「活用して深めよう」のコーナーが設けられており、課題に取り組む過程で必要な学習内容を学ぶことができるように組織されている。

大修館書店 最新 中学校保健体育

実践的な健康の保持増進及び改善を目的とした内容の取扱いになっている。課題を発見し、その解決をめざした学習活動を促すため、「課題をつかむ」を設けるとともに、学習を深めたり、習得した知識を日常生活に生かしたりする「学習のまとめ」を設けている。

学研教育みらい 中学保健体育

身近な生活から自他の健康課題を見つけ、様々な情報や取組を生かしながら解決策を考えることができるようになっている。「見方・考え方」が示され、それを参考にして、課題を見つけたり、解決方法を考えたりすることで、学びを深めることができるようになっている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

美濃律委員

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、夏休みの期間が短くなってしまっていると思います。登下校中を含めた熱中症が懸念されていると思いますが、「熱中症の予防」についてはどのように取り扱われていますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
熱中症の予防についてですが、どの発行者でも、体育理論の「運動やスポーツの安全な行い方」や保健分野の「傷害の防止」「環境の健康への影響」で取り扱っています。

例えば、東京書籍では、「健康と環境」で熱中症のメカニズムや主な発生要因、水分をこまめに補給するなどの熱中症の予防、応急手当について取り上げています。

また、大日本図書では、章末資料に2ページにわたって取り上げ、熱中症になりやすい条件や熱中症の予防、応急手当について詳しく説明しています。

八十祐治委員

子どもを取り巻く環境が大きく変化している中で、生徒自身が、生涯にわたって、正しい健康情報を選択したり、課題を解決していく必要があると考えています。そのような力を育成するため、授業改善の視点から、特徴的な発行者があれば教えてください。

教育指導課課長代理(丸山みち子)

授業改善の視点から、特徴的な発行者というご質問についてですが、どの発行者においても、学習過程の中で、課題を合理的に解決する学習活動が行えるよう工夫されています。

東京書籍では、紙面構成として、「見つける」「課題の解決」「広げる」を配置し、学習の流れに沿って課題を解決することで、深い学びが実現できるよう工夫されています。また、学習内容に関連した「資料」を豊富に取り上げ、学習課題を受けて豊富な資料から知識を習得し、学習を深めていくことができるよう工夫されています。

学研教育みらいでは、「課題をつかむ」「考える・調べる」「まとめる・深める」を、学習の流れに沿って配置し、課題解決的に学習を進められるようにしています。イラストが適所に使用されていることで、生徒の興味関心を高め、理解を深められるよう工夫されています。
浦野真彦委員

最近、大きな災害が多いのですが、高槻市でも、地震や台風、ゲリラ豪雨など、自然災害の発生が懸念されます。防災教育については、最も重要な教育の1つとして位置付けているところですが、自然災害については、各者どのように取り扱っていますか。
教育指導課課長代理(丸山みち子)
自然災害についてですが、4者とも、過去に発生した自然災害の写真を掲載し、自然災害への備えや地震が発生したときの行動、緊急地震速報など災害時の対策について取り扱っています。

特徴として、東京書籍では、体育館で中学生が避難所運営訓練を行う写真や、中学生が中心となって地域のきずなを深めた読み物資料を扱うなど、自助・共助・公助の視点から中学生の役割を取り上げるとともに、「自然災害」の取り扱いページ数が4者の中で最も多くなっています。

大日本図書では、日頃からの備えだけでなく、非常持出用品について記載や、中学生が避難所でできることについて考えられるような内容を取り上げています。

学研教育みらいでは、大阪府北部地震で水道管が破裂し陥没した高槻市の道路の写真を掲載しています。また、コラムとして、東日本大震災で小中学生が自主的に避難して多くの命が助かった岩手県釜石市の事例を掲載しています。
深堀基子委員
高槻の子どもについても体力低下が課題とされていますが、体力向上について教科書の中ではどのように扱われていますか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
体力向上についてですが、どの発行者でも、体育理論の「運動やスポーツの意義や効果と学び方や安全な行い方」で取り扱われています。また、中学校2年生で実施する新体力テストの行い方や、結果の活用方法、体力を高めるための運動例についても掲載しています。

東京書籍では、体力を向上させるためには、自分の目的に合った運動計画を立て、継続して行うことが必要であるという内容になっています。

また、大日本図書では、心拍数を一定に維持しながら楽しく走る「ペース走」の紹介や、「マイトレーニング」として習慣的に運動やスポーツを行うためのポイントを掲載しています。

樽井弘三教育

新学習指導要領では、育成すべき資質・能力が3つに整理されたわけでございます。その中の「学びに向かう力、人間性」、「態度を養う」と言ったらいいのかなと思うのですが、保健体育科の各教科書では、「態度を養う」という視点で、どんな工夫がされているのか、少し紹介してください。
教育指導課課長代理(丸山みち子)
どの発行者においても、各単元の最後には、学習したことを活用して生活の中でどのように実践していくかを考えることで、生涯にわたって運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し、明るく豊かな生活を営む態度を養うことができるよう工夫されています。

東京書籍では、共生の視点などの今日的な課題に関わる資料が多く掲載されており、豊富な資料が生徒の学ぶ意欲を高めるとともに、単元末の「広げる」では、学習したことを自分の生活に当てはめて考えたり、関連する内容についてさらに調べたりする活動を取り入れることで、実生活や実社会で実践する力が育成できるよう工夫されています。

学研教育みらいでは、単元末に「まとめる・深める」を設けており、学習のまとめとして、目標を立てたり、人に伝えたり、さらに考えたりするなどして、実生活につなげられるよう工夫されています。また、探究的な学習活動例を掲載し、生徒の探究心に応え、より深い学びに結び付けられるよう工夫されています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、保健体育について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

八十祐治委員
私は、この場の審議から考えまして、東京書籍が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、八十委員から東京書籍が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、保健体育につきましては、東京書籍を採択することに決します。

続きまして、技術・家庭(技術分野)について審議いたします。報告をお願いします。

【13.技術・家庭(技術分野)】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい技術・家庭 技術分野 未来を創るTechnology

実習題材に関する基礎技能を「テックラボ」というページで集約して、実習で活用しやすいよう工夫されている。最適化の窓というページを用いて、技術の見方・考え方をしっかり捉えさせている。4つの編で構成されており、課題を発見し、製作することで解決し、評価を行う流れで統一されている。

教育図書 New技術・家庭 技術分野 明日を創造する/New技術・家庭 技術分野 明日を創造する技術ハンドブック

実習題材に関する基礎技能を別冊の技術ハンドブックに集約し、実習で活用しやすいように工夫されている。実習の進め方が見開きにわかりやすく示されており、製作工程の全体像がつかみやすくなっている。加工に関する技能は、写真で示され、生徒の目線で示されている。

開隆堂 技術・家庭 技術分野 テクノロジーに希望をのせて

基本的な知識・技能の定着、製作を行い問題解決し、振り返るという流れがどの編でも統一されており、授業の見通しが持ちやすいように工夫されている。原理、法則等の用語をまとめて表示し自己チェックできるページがあり、自学自習に用いることができる。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

浦野真彦委員

新しい学習指導要領では主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を目指すことを挙げています。技術の授業において「深い学び」にいたるような工夫をそれぞれの教科書ではどのようにされているのでしょうか。

教育指導課副主幹(平井新一郎)

それぞれの教科書には、技術の見方・考え方を働かせながら、自ら課題を見つけ出し、課題の解決を行う探究の過程が工夫して記述されています。

東京書籍では見方・考え方を「最適化の窓」としてわかりやすく示し、見方・考え方を働かせることが容易にでき、深い学びに至るような工夫がされています。

教育図書では問題の発見、設計、製作、振り返り、社会の課題へ目を向けるという枠組みがはっきりと作られ、どの編でも共通しており、学ぶ側が安心して取り組める内容になっています。

開隆堂では身近な問題解決をマークや「問題の発見」として示し、幅広い見方・考え方につなげられるようになっています。

深堀基子委員

技術は、授業内で多くの道具や工作機械を使用する機会があると思われますが、安全や事故防止についての工夫はそれぞれの教科書でどのようにされていますか。

教育指導課副主幹(平井新一郎)

どの教科書においても巻頭にまとめて安全に作業を進めるための注意事項が示されています。また、作業を進めるところでも安全に関するポイントを「安全マーク」を用いて示しています。特に教育図書では4つのどの編においても違った作業内容の観点から安全について考えるページが設定されています。また別冊ハンドブックとして作業に使用する工具類の正しい使用方法がまとめられています。

美濃律委員

実際に教科書を使用する現場の先生方の意見として、何か特徴的なものがあれば教えていただきたい。

教育指導課副主幹(平井新一郎)

東京書籍では図版や資料が多く取り上げられ、学習の理解に繋がりやすい。という意見がありました。

教育図書では別冊ハンドブックに工具の使い方が具体的に丁寧に記述されている。文字や写真が大きく見やすい。という意見がありました。

開隆堂では、各分野の学習内容がバランスよく取り上げられているという意見がありました。

八十祐治委員

高槻市では、防災教育に力を入れていると思いますが、防災教育の内容はどのように示されていますか。

教育指導課副主幹(平井新一郎)

どの教科書にも防災に関する記述があり、関連がある部分には必ず「防災マーク」がついています。

東京書籍では地震に耐える強い構造を紹介していました。

教育図書では、様々な分野を総合した製作課題として災害時に安定した電力を得られるバッテリーチャージャの製作例を紹介していました。

開隆堂では、電気機器の安全な利用という部分で、事故防止についての仕組みを紹介していました。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、技術・家庭(技術分野)について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

美濃律委員
3種類の教科書を比べてみますと、情報量には多少の違いは見られますが、文字、図、写真が大きく、実習の進め方が見開きに見やすく表示され、別冊のハンドブックは実習で利用しやすいように工夫されていたりということで、教育図書のNew技術・家庭 技術分野 明日を創造する/New技術・家庭 技術分野 明日を創造する技術ハンドブックが良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、美濃委員から教育図書が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、技術・家庭(技術分野)につきましては、教育図書を採択することに決します。

それでは、続きまして技術・家庭(家庭分野)について審議いたします。報告をお願いします。

【14.技術・家庭(家庭分野)】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新しい技術・家庭 家庭分野 自立と共生を目指して

「問題を解決する道筋」では、問題解決のプロセスが示されており、日常生活の中から課題を見いだし、解決する力を養うことができるよう取り扱われている。活動例や生活の課題と実践の進め方などが示され、対話を助けて生徒同士の協議を促し、主体的・対話的で深い学びにつなげることができる。

教育図書 New技術・家庭 家庭分野 くらしを創造する

各章に1つ以上、教科書全体で合計12の課題解決学習の見開きページを内容のまとまりごとに設けており、問題発見から解決までの流れが明確に示されている。同様の学習過程をくり返すことで、課題解決力を養う仕組みになっており、深い学びが実現するよう配慮されている。

開隆堂 技術・家庭 家庭分野 生活の土台 自立と共生

日常生活の中の課題を見出し、解決するためのヒントが多く提示されており、「話し合ってみよう」「考えてみよう」等、問題提示をする小課題が随所に扱われている。自らの疑問・関心を大切にした発問から始まり、課題へ対話的に取り組むように「発表しよう」などの言語活動が効果的に設定されている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

深堀基子委員

学習指導要領の改訂をうけて、大きな変更点はありましたか。
教育指導課課長代理(丸山みち子)
大きな変更点でございますが、どの発行者も改訂の趣旨を踏まえて、小・中・高等学校の内容の系統性を明確にするために、内容の示し方が改善されています。従来4つの内容でしたが、3つの内容A「家族・家庭生活」B「衣食住の生活」C「消費生活・環境」に整理されました。

さらに、社会の変化に対応することが求められていることを踏まえ、内容項目が3点新設されています。1.「高齢者など地域の人々と協働すること」に関する内容、2.グローバル化への対応として日本の生活文化を継承していくことの大切さに気付くことができるよう、和食や和服など日本の伝統文化について取り扱うようになったこと、3.持続可能な社会の構築への対応として、「計画的な金銭管理」や「消費者被害への対応」に関する内容、が新設されました。

美濃律委員

ただいまの説明にもありました少子高齢化社会の進展に関連して、高槻の生徒が、家族や地域の人々、特に高齢者とよりよく関わる力をつけていくことが求められていると考えていますが、各教科書ではどのように扱われているか説明していただきたい。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
高齢者との関わり方に関するご質問ですが、東京書籍におきましては、高齢者のより豊かな生活をイメージし、高齢者との関わり方を工夫できるように、趣味や生きがいをもち続けながら高齢期を送る方の資料や、専門家からのアドバイスが掲載されています。

教育図書におきましては、高齢者など地域の人々と協働するために、高齢者の身体的特徴を理解するための活動例を示すだけでなく、地域の人々と関わる時の主なマナーや介助の方法などの具体的な記載もございます。

開隆堂におきましては、見開き2ページにかけて高齢者との関わりについて取り上げられています。

八十祐治委員

食育の一層の推進が、学習指導要領でも示されていましたが、調理実習といった実習を実施する家庭分野では、例えば食物アレルギーについては、どのように扱われているのですか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
食物アレルギーの取り扱いについてでございますが、安全に調理をおこなうことができるよう、調理実習の実習例を挙げるページでは食物アレルギーの原因となる食品表示についての記載が、どの発行者にもございます。

東京書籍におきましては、幼児のおやつの実習例で、食物アレルギーについての学習、配慮が明示されています。

教育図書におきましては、調理実習において、ページ下部に「食物アレルギーへの対応」欄を設け、特定原材料を使用する料理に代替食品例を示しており、食物アレルギーへの具体的な対応についての記載があります。命にかかわる食物アレルギーへの注意が充実しており、どの生徒も安全に実習に参加できるよう配慮がされています。

開隆堂におきましては、実習例のページでは、アレルギー物質を含む食品については黄色いマークで示されています。

浦野真彦委員
グローバル化についての説明もいただきましたが、今回の改訂でグローバル化する社会を踏まえ、日本の生活文化を継承していく大切さに気付くことが重要視されていますが、和服、和食、伝統文化などについて各者でどのように扱われているのでしょうか。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
和服、和食、伝統文化などの取り扱いについてでございますが、どの者も、日本の生活文化を継承していくことの大切さに気付くことができるよう配慮されています。

食生活の内容においては、日本の食文化への理解を深めるために、地域の食材を用いた調理として、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」を複数ページにわたって掲載しています。また、和食の特徴である「だし」の取り方が扱われていたり、日常食べられている和食として、煮物や汁物が取り上げられているのも特徴です。

衣生活の内容においては、和服の構成と浴衣の着方について取り扱われています。

どの発行者も、教科書全体を通して日本の伝統的な年中行事や、衣食住の生活にかかわる日本の伝統文化を取り上げています。

特に教育図書では、「年中行事と私たちの暮らし」として6ページ分の掲載があり、生徒が年中行事と日常生活のつながりを感じることができるよう工夫されています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、技術・家庭(家庭分野)について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

深堀基子委員
教科書を3者見せていただいて、どの発行者の教科書も、この教科書が1冊あれば家事が立派にできる内容だと思いました。その中でも、食物アレルギーの対応で代替食品を紹介していたり、今の現状に合ったマスクの作り方、また、調理実習のところでは調理の手順が1ページに縦に並んでいてすごく見やすいなと思いました、私は、教育図書のNew技術・家庭 家庭分野 くらしを創造するが良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、深堀委員から教育図書が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育

ご異議が無いようですので、技術・家庭(家庭分野)につきましては、教育図書を採択することに決します。

それでは、続きまして英語について審議いたします。報告をお願いします。

【15.英語】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 New Horizon English Course

3年間を貫いて、卒業時の到達目標に向けた学習を積み上げていく構成が明確で、各学年の巻頭ページで見通しを立て、巻末ではCan-Doリストをもとに学習の到達度を振り返ることができ、主体的に学習する態度の育成に効果的である。3年生最後の課題として、ディベートが取り上げられている。

開隆堂 Sunshine English Course

コミュニケーションを意識した言語使用場面がマンガで示され、自然な場面・状況の中で言語材料を導入することができる。また、教科書本文を学習した後に、自分の言葉で再構築できるReTellの活動が随所でできるように工夫されているため、自分の言葉で表現する力を身に付けることができる。

三省堂 New Crown English Series

各Lessonの初めには、これから学習する題材への興味を高める工夫がある。どのLessonにも2つの質問があり、学ぶ内容への動機づけをし、主体性を高める効果がある。まとまりのある英文を読んで概要や要点を読み取る力を育成し、思考力、判断力、表現力等の育成が目指されている。

教育出版 One World English Course

習得してきた言語材料を繰り返し使用することで、主体的に発信したり、表現したりする活動を通して実際に活用できる技能を身につけることができる。効果的な学習方法の例を取り扱うHow to Studyを通して、4技能を高め、深い学びを実現するためのポイントが単元の終わりに示されている。

光村図書 Here We Go! English Course

理解したことを表現につなげる言語活動が工夫されており、伝える内容を考えて活動できるようになっている。Story ReTellingのコーナーで自分の言葉で表現し直す活動を行ったり、Let's Talk!のコーナーで即興力を鍛えたりすることによって、段階的に表現活動を深めることができる。

啓林館 Blue Sky English Course

興味関心をひく題材を各Unitで取り上げ、単元の最後にまとめの課題が設定されている。4技能を単独で扱うのではなく、読んだり聞いたりした内容について話したり、書いたりするなど複数の技能を統合した言語活動を通して、主体的・対話的で深い学びにつながるように工夫されている。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

八十祐治委員

新学習指導要領の完全実施に伴って、英語の授業も大きな変化があると思いますが、新しい教科書の特徴として何かあるのか説明してください。
教育センター所長(藤田卓也

新しい教科書の特徴でございますが、各発行者とも新学習指導要領で示された各技能をバランスよく学習できる内容になっています。また、自分の考えや気持ちを伝え合う対話的な活動が重視されていることや、それぞれの活動が必然性を持つよう、実際の使用場面を想定した活動が多く設定されています。また、小学校での学習を踏まえた内容になっていることも特徴です。中学校で扱う語彙、文法事項も追加されているといったことが新しい教科書の特徴となっております。

浦野真彦委員

今のお話ですと、実際の使用場面を意識したコミュニケーション活動が多く設定されているということでしたが、その点で特徴的な発行者はありますか。
教育センター所長(藤田卓也

コミュニケーション活動に関してでございますが、どの発行者におきましても、実際の使用場面を意識した言語活動となるように構成されています。各単元で理解したことを表現につなげる言語活動が取り入れられており、自分の言葉で表現しなおす活動や、ペアで身近な話題を会話することにより即興力を鍛える活動を通して、段階的に学びを深めるといった工夫が見られます。

特徴的な発行者といたしましては、開隆堂では、実際のシチュエーションを意識した言語活動が多く取り入れられています。また、教科書本文の内容を習った表現を使って絵や写真をもとに説明させるような活動や、ある話題に関しての感想などについてやりとりを行う活動が豊富に取り入れられており、教科書に沿って進めていく中で自然と学習した知識や技能を繰り返し活用する活動が設定されています。

光村図書では、各ユニットの「Speak」という活動や、巻末に設けられた英語でやり取りをする「Let’s Talk」での活動など、1年生の段階から自分のことについて表現し合うような、実践的なコミュニケーションが多く設定されています。

啓林館では、ペアやグループでの活動を設け、意見や考えを伝え合い、理解し合うといった表現活動を深める工夫がされています。

美濃律委員

子どもたちの興味、関心や発達段階にあった教科書を選ぶ必要があると思いますが、高槻の生徒の実態からみてふさわしい適切な教科書とは具体的にどういうものなのかご説明いただければと思います。

教育センター所長(藤田卓也

これまでの全国学力・学習状況調査や大阪府中学生チャレンジテストの結果では、全国および大阪府の平均を大きく上回る結果となっており、高い水準を示しています。新学習指導要領で求められるさまざまな技能をバランスよく学習できることはもちろんのことですが、生徒1人ひとりが自立した学習者となるよう、気付きを促したり、見通しを持ったり、自己の学びを振り返ったりできるような教科書がふさわしいと考えています。

例えば開隆堂では、各学年の冒頭で年間の見通しを持つページが設定されています。英語の学習のポイントを押さえるための「学び方コーナー」では、辞書の使い方や語彙の増やし方、活用の仕方を取り扱うことによって、効果的な学習方法が身につくように配慮されています。

三省堂では、付録の中で辞書の使い方や英語学習のコツなどを扱っており、英語のアクセントやイントネーションなどの違いに気づいたりするコーナーがあるなど、学びを自分自身でコントロールできる工夫がされています。

教育出版では、巻頭に年間の学習内容と目標、巻末に学習到達目標のチェックリストがあり、見通しと振り返りを意識した構成になっています。英語の技能に関わるルールや学習方法のアドバイスを取り上げるなど、家庭学習を通して自律的な学習ができる配慮が見られる工夫がございます。

深堀基子委員

小学校では外国語活動、外国語科の授業が始まっていますが、小学校外国語との接続について中学校の教科書ではどのように扱われていますか。

教育センター所長(藤田卓也

接続についてでございますが、どの発行者におきましても、小学校との接続を意識した構成になっております。例えば、小学校と同様に、音声での導入の後に文字指導を行うことや、これまで慣れ親しんできた表現や語句は導入期から使用していることなどがあげられます。また、はじめに身近な生活に即したコミュニケーション活動を取り入れることや、聞いたり読んだりする過程の中から文の持つ意味や構造に気づき、文法事項として理解していくという流れも、小学校からの接続を意識したものとなっております。

特徴的なものといたしましては、例えば東京書籍では、絵やマンガなどを用いた場面設定から、新しい文法事項の用法や意味を自然にとらえられるような工夫が見られます。

また、開隆堂では、各ユニット冒頭のコーナーで、自然な場面で新しい語句や文法が導入されており、音声や映像から文字へとつながっていくといった小学校での学習の流れを意識したつくりになっています。

光村図書では、教科書の本文が3年間を通したストーリーとして構成されており、絵や場面の状況から単語や文法への理解や気づきにつながるような構成になっています。
八十祐治委員

教科書のページ数が増え、小学校の学習を踏まえて内容が高度になっていると思いますが、英語が苦手な生徒でも発展的な内容に諦めずに取り組めるような工夫が各発行者ありますか。

教育センター所長(藤田卓也

発展的な内容についてでございますが、どの発行者も、発展的な課題や読み物教材が扱われており、まとまった分量の英文が設定されています。ただ、難易度の高い課題に関しては、音声や映像から内容をおおまかに理解し、理解した語句を繰り返し使用しながら英語の定着を図るといった工夫されています。

その他の取組の工夫で特徴的なものを申し上げますと、東京書籍では、各ユニットの冒頭で写真や映像などを通して題材や活動内容の見通しが持てるような工夫がされており、ペアでやり取りをしながら理解が深まるように構成されています。

開隆堂では、1年生の終盤から各プログラムの終わりに自分の言葉で内容を説明する「ReTell」や、理解した内容をペアやグループで交流する「Interact」の活動が入っており、授業で必ず扱う活動として位置づけられています。これは、現行の教科書では扱われていない活動ですが、知識・技能から思考・判断・表現につながる大切な活動であると考えています。

また、光村図書では、習得した表現を繰り返し使用する中で定着させていくための資料が巻末にまとめられております。また、やりとりに使用できる語彙が絵辞典として付属されているのも特徴です。
美濃律委員

実際、教科書を使用する教員にとって使いやすさや指導のしやすさという観点で見たときに何か特徴的な教科書はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

今回の改訂で、教材を自分のこととして捉えて表現することが重視されていることから、日々の授業において学んだことを自分の中に取り込んで考えを深め、表現することができる、そういった工夫が見られる教科書が望ましいと考えております。どの発行者におきましても新学習指導要領に示された資質・能力が育まれるように工夫されております。

特に特徴的なものといたしましては、東京書籍におきましては、小学校での授業展開を意識してユニットの冒頭に映像を通して概要がつかめるように工夫されており、その中で、自分の考えを深めたりして、それを表現していくといった活動につながるよう設定されています。

教育出版におきましては、教科書の流れに沿って進めることによりペアやグループでの活動を通して対話的な学びが実現するような構成になっています。

光村図書におきましては、言語の使用場面がわかりやすく、つながりのあるストーリーの中で学ぶべき表現や文法事項が理解できるような工夫がされており、文章の概要をつかんだ上で表現活動につながるような構成になっています。

深堀基子委員

小学校では音声や文字に慣れ親しみ、自分の考えを伝え合う活動を通して英語を楽しく学んでいるように思うのですが、中学校では文法でつまずく生徒が増えるように思います。文法の扱いや理解するための手立てとして工夫されている発行者はありますか。

教育センター所長(藤田卓也

文法の扱いや理解の手立てについてでございますが、文法はコミュニケーションを支えるものととらえ、実際のコミュニケーションを目的とした英語の運用能力を培うような構成となっています。今までのように「文法を学ぶ」という意識ではなく、小学校外国語科の学習の流れと同様に、自然な場面や状況で聞いたり読んだりしながら、文の持つ意味や構造への気づきを促し、子どもたち自身が整理していく際に文法事項として理解していく流れとなっています。

一例を挙げますと、三省堂では、各単元の最初のページで内容への興味を持たせ、本文を通して様々な表現を理解しながら単元の後半で言語活動を通して定着していくような流れができています。

教育出版では、言語の使用場面が分かりやすく、つながりのある本文の中で学ぶべき表現や文法事項を理解し、設定された言語活動を行う中で身につけていくという構成となっています。

啓林館では、各単元の最初に内容への興味関心を高める工夫がされており、段階を踏んで難しい文法事項への理解が自然と身につくように工夫されています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、英語について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

八十祐治委員
私は、この場の審議から考えまして、開隆堂が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、八十委員から開隆堂が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育長

ご異議が無いようですので、英語につきましては、開隆堂を採択することに決します。

それでは、道徳について審議いたします。報告をお願いします。

【16.道徳】

教育指導課指導主事(直原考志)

各発行者の総合所見の中から特徴的な事項を抜粋にてお伝えいたします。

東京書籍 新訂 新しい道徳

教材数は35時間分の教材だけでなく付録に5教材があり、各校の実態に合わせて柔軟な指導ができるように配慮されている。各学年2つずつ教材文の一場面を役割演技する「アクション」のコーナーが設けられ、学習内容を自分のこととして捉えて、考えを深められるようになっている。

教育出版 中学道徳 とびだそう未来へ

30の教材と差し替え可能な5つの補充教材が掲載されている。じっくり考える時間と十分話し合う時間が生み出されるよう、短い教材や見てわかる教材が多く掲載されている。いじめや生命の尊さについて各学年組まれているほか、臓器移植や裁判員制度も取り扱われている。

光村図書 中学道徳 きみが いちばん ひかるとき

発達段階や授業時間を考慮したページ数とし、中学校以上配当の常用漢字については、全て振り仮名が付され、本文の理解を助ける脚注も随所に配されている。教材末に設けられている「考えよう」では、めあてや発問が明示されていることで、主体的・対話的で深い学びを実現するための工夫がされている。

日本文教出版 中学道徳 あすを生きる/中学道徳 あすを生きる 道徳ノート

教材が、テーマごとにユニット化され、学校生活の場面と関連付けながら、議論できるような教材やコラムが選定されている。内容も中学生が興味を持つようなものが多い。活動も読むだけでなく、討論したり、体験したりできるように工夫されており、より深く考え、自分自身を見つめることができる。

学研教育みらい 新・中学生の道徳 明日への扉

テーマを掘り下げて考えられるように話の結末を明記していなかったり、教材の主題名をあえて本文より前に記載しなかったりと、生徒自らが考えを深め、主体的に問題意識を持てるように工夫されている。また、主体的・対話的で深い学びを実現させるために特設ページが設置されている。

廣済堂あかつき 中学生の道徳/中学生の道徳ノート

本冊と別冊ノートの二分冊で、相互に活用することで道徳的思考を深められるよう構成されている。別冊ノートは、内容項目ごとのページになっており、自分自身を見つめ考え、心の在り方や成長を振り返ることができるよう工夫されている。

日本教科書 道徳

学習指導要領の内容項目順に22の教材で構成されている。いじめや情報モラルなど全学年に配置され、現代的な課題を読み解けるような配慮がなされている。生徒が題材を考える際の参考となるよう各教材末尾には「考え、話し合ってみよう、そして深めよう」の設問がある。

樽井弘三教育

報告が終わりましたが、委員の皆さん何かご意見ご質問はございませんでしょうか。

浦野真彦委員

中学校では、道徳が教科化され、現在の教科書を使用して2年目となりますが、現場の先生方から実際に使用してみて、何か特徴的な意見は上がっていますでしょうか。

教育指導課長(青野淳)

現在は日本文教出版の教科書を使用していますが、学校の先生方からは、概ね肯定的な意見をいただいております。例えば、「情報モラル教育や安全教育といった生徒が身近に感じるような資料が豊富である」や、「生徒がよく知る人物、漫画形式の教材など、生徒が身近に感じる教材が多く、いろんな角度・立場から物事を捉えられる教材が多く見られる」といった意見等がございました。

また、現行の教科書には別冊「道徳ノート」がついており、これについても「学びを記録するために活用できる」、「シンプルで、考えさせたい内容について書かせることで、子どもたちが自分の考えを深めさせることができる」、「個人で考え、議論し、考えを深めるという流れが道徳ノートの中でわかりやすく作られている」といった意見もございました。別冊で一定の授業の流れを示すことで、経験の浅い先生方も非常に扱いやすいということが考えられます。

美濃律委員

別冊ノートについては、先ほども「現場からも概ね肯定的な意見が寄せられている」ということでしたが、日本文教出版以外に廣済堂あかつきの教科書にも別冊がございます。別冊について、この2者にはどのような違いがあるのかご説明いただけますか。

教育指導課長(青野淳)

別冊につきましては、まず、廣済堂あかつきの別冊については、本冊の教材と入れ替え可能な教材が22本準備されています。また、「学習の記録」という日々の授業で気付いたことや考えたところを書く欄や、特に心に残った授業について記録を残す欄などが設けられております。

先ほどの、日本文教出版の別冊については、全教材に対応したワークシートが用意されております。また、学習指導要領の改訂の経緯にもある「考え・議論する道徳への転換」を図るための工夫がされており、「課題を見出し」→「自分の考えをまとめ」→「他者と議論し」→「自分の考えを深める」という一連の流れが示されており、先ほども触れましたが、道徳の経験の浅い先生方でも非常に扱いやすいのではないかなと考えています。

深堀基子委員

道徳の評価については、学習指導要領の中で、「道徳科の評価は年間や学期といった一定のまとまりの中で成長の様子を把握する必要がある」とあったり、数値での評価ではなく文章表記による評価を行ったりなど、他の教科とは違った「むずかしさ」があると思います。その中、高槻市では「評価文例集」を作成していると聞いていますが、評価を適切に行っていくための工夫として、特徴的な教科書はありますでしょうか。
教育指導課長(青野淳)

先ほどご質問の中にもいただきました通り、道徳の評価につきましては「一定のまとまりの期間の中」で生徒たちの変容を見取っていく必要がございます。教師が生徒たちの変容を見取る上で、参考となる工夫は各者に見られます。それは、生徒が授業ごと、学期ごとに自分の学びを直接記入する欄が教科書の中に設けられています。

例えば、東京書籍の教科書では、学期ごとに学習の記録(自己評価)を書き込めるページがあります。このページは切り取って、ファイリングすることもできるため、生徒の学びの経過をのちに確認することができます。

日本文教出版では、先ほども説明したように別冊があるため、その中に1年間の学びの記録を蓄積することができます。また、毎時間、生徒が自分の学びを振り返り、自己評価できるようにもなっています。

八十祐治委員

学習指導要領の改訂の基本方針の中で、「今回の道徳教育の改善に関する議論の発端となったのは、いじめの問題への対応である」というふうに示されていたと思いますが、「いじめ問題」に対する対応は、道徳科の中でも特に大切な内容だと思いますが、いじめ問題に関する教材はどのように取り扱われているのか。特徴的なところを教えてください。
教育指導課長(青野淳)

いじめ問題についても各者取り扱いがございます。

例えば、学研教育みらいの教科書では、様々な内容項目から全学年にわたって複数の教材が配置されています。1年生で4教材、2年生で5教材、3年生で6教材、3学年で合計15のいじめ問題に関する教材が取り扱われています。

中でも、日本文教出版の教科書では、複数の内容項目に属するさまざまな教材とコラムを組み合わせた構成がされています。全学年で17のいじめ問題に関する教材が取り扱われており、これは7者の中でも一番多い数になっています。また、複数の教材を一定期間に集中されることで、より深く、多面的・多角的に考えられるように工夫されています。

浦野真彦委員

いまや中学生のほとんどが携帯電話等をもっている時代と思うのですが、Snsが関係することで、いじめが重篤化するケースがあると思います。また、今年5月の報道でもありましたが、女子プロレスラーの方へのSnsによる誹謗中傷による非常に悲しいニュースがありました。そういったことからも、様々な教科を通じて情報モラルについて、子どもたちには教えていく必要があると思います。道徳の教科書において、この情報モラルについてはどのように取り扱われているのでしょうか。
教育指導課長(青野淳)

情報モラルにつきましては、先ほどからもありました通り、さまざまな教科で取り扱われています。当然ながら、この道徳の教科の中でも、すべての各者において取り扱いがあります。

中でも光村図書と学研教育みらいでは、3年間を通じて情報モラルを題材にした教材が掲載されています。

光村図書では、全学年に情報モラルについて考えるユニットが設定されています。生徒の日常に起こる場面を具体的に取り上げ、そのとき必要な心構えを問うことで、生徒が自分のこととして考えられるような工夫がされています。

学研教育みらいでは、情報モラルの教材が各学年に用意されていて、発達段階に応じた系統的な問題提起がなされています。例えば1年生では「スマホ依存」について、Snsと自分との関わりを、2年生では「スマホを通した対人関係」について、Snsを通じた友人との関係を、最後に3年生では「情報の受信・発信」について、Snsを通じた社会との関わり、そういったことをそれぞれ考えられるような工夫がされています。

美濃律委員

先ほど、他の教科でも言いましたが、2年前に高槻市では大阪府北部地震や西日本豪雨、台風による被害など、多くの災害を経験しました。その中で、改めて自助・共助の大切さや、災害を乗り越えて人間としての生き方を深く考えることの大切さを感じております。今回の教科書ではどのような防災教育に関連する教材が取り扱われているのか、特徴的なところがあれば教えてください。

教育指導課長(青野淳)

今回の道徳においても、どの発行者においても取り扱いがあります。教材として扱われていたり、コラムとして取り扱われていたり、その両方の発行者もございます。

例えば、教育出版では、1年生のコラムで「防災について考えよう」が取り扱われており、同じく1年生で東日本大震災を取り上げた教材がございます。

日本文教出版では、「安全に生きる」と題したコラムが設定されており、身近な安全・防災について考える場面になっているだけでなく、3学年とも東日本大震災を取り扱った教材が用意されています。

深堀基子委員
高槻市では、これまでも知・徳・体からなる「生きる力」を育む教育を進めてきました。今後もこの方向性を発展させ、たくましく「社会を生き抜く力」や「未来を切り拓く力」など、これからの社会の形成に参画するために必要な力を育てていくことが必要であると考えています。そこで、本市の教育振興基本計画にも示されている、よりよい社会の形成に主体的にかかわる力について、取り扱いのある教科書があれば教えてください。

教育指導課長(青野淳)

いわゆる社会参画力についての取り扱いでございますが、特徴的なところでお答えさせていただきますと、日本文教出版の教科書では、さまざまなテーマでユニットが組まれていますが、「よりより社会と私たち」というテーマでもユニットが組まれています。このユニットは、全学年に配置してあり、発達段階に応じた系統的な教材の構成になっています。各学年のテーマは、例えば、1年生では「身近な社会に目を向ける」。2年生では「働くことや社会との関わり」。3年生では「将来の生き方や社会の在り方」となっています。また、2年生では多くの学校で設定されている職場体験の事前・事後指導として活用できる教材も用意されていると考えています。

あと、学研教育みらいの教科書でも、「キャリア教育」についてのユニットが全学年に配置されており、様々な分野で活躍する、今を生きる人たちを取り上げた教材が多数取り扱われています。

樽井弘三教育

他に何かご意見ご質問はございませんか。
それでは特に無いようですので、道徳について採択したいと思いますが、いかがでしょうか。

浦野真彦委員
私が中学生だったころ、40年ほど前になりますが、道徳というのは教科ではなかったわけでして、今回大変興味がありまして、7者全ての教科書、全ての教材を読ませていただきました。同じ教材でも結末が少し違っていたりするものもありまして、各者配慮、工夫があるのだなと感じました。私なりに読後いろいろと考えましたこと、選定委員会の報告、そしてこの場の審議を総合的に判断いたしまして、私は、日本文教出版が良いと思いますが、いかがでしょうか。

樽井弘三教育

ただいま、浦野委員から日本文教出版が良いとのご意見でしたが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育

ご異議が無いようですので、道徳につきましては、日本文教出版を採択することに決します。

樽井弘三教育

それでは、次に令和3年度に特別支援学級において使用する学校教育法附則第9条関係教科用図書について審議いたします。選定委員長より答申の朗読をお願いします。

選定委員長(竹原正和)(答申について理由説明)
令和3年度に特別支援学級において使用する学校教育法附則第9条関係教科用図書について答申いたします。

障がいのある児童生徒の社会参加や自立を実現させる観点に立ち、特別支援学級に在籍する児童生徒と通常の学級に在籍する児童生徒が、共に学び、共に育つために、高槻市では、可能な限り通常の学級での交流及び共同学習を進めています。そのため、特別支援学級の児童生徒も附則9条本ではなく「検定教科書」を使用することが望ましいと考えます。

しかし、特別支援学級に在籍する児童生徒のうち、弱視児童生徒等につきましては、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」第1条及び第2条に基づき、対象児童生徒が必要とする種目の「拡大教科書」を使用することが望ましく、その際の各種目の「拡大教科書」につきましては、令和3年度使用教科用図書として採択された発行者の教科用図書を拡大したものと考えます。

樽井弘三教育

ただいま、選定委員長より答申の朗読が終わりました。視覚障がいのある児童生徒の附則9条本についてですが、令和3年度使用教科用図書として採択された発行者の教科用図書と同一内容の「拡大教科書」及び「点字教科書」を、障がいの実態に応じて採択するということでよろしいでしょうか。

(異議なし)

樽井弘三教育

ご異議がないようですので、附則9条本については、令和3年度使用教科用図書として採択された発行者の教科用図書と同一内容の「拡大教科書」及び「点字教科書」を、障がいの実態に応じて採択することといたします。

樽井弘三教育

続きまして、令和3年度使用高槻市立義務教育諸学校教科用図書小学校の採択について審議いたします。事務局より説明をお願いします。

教育指導課課長代理(丸山みち子)
小中学校用教科書については、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律施行令第14条及び同法施行令第15条第1項に基づき、附則9条本を除き同一の教科書を採択する期間は4年となっております。

先ほどの学校教育監より説明がありました通り、小学校につきましては、令和元年度に新たに教科書の選定を行っております。そのため令和3年度につきましては、本日配付の参考資料にあります「令和2年度使用教科書」と同一の教科書を採択することとなっておりますので、よろしくお願いいたします。

樽井弘三教育

ただいま、説明が終わりましたが、委員の皆さん何かご質問はございませんでしょうか。

樽井弘三教育

よろしいでしょうか。

特にないようですので、高槻市立小学校は参考資料のとおり、令和2年度と同一の教科書を採択することにしたいと思いますが、いかがでしょうか。

(全員異議なし)

樽井弘三教育

ご異議がないようですので、高槻市立小学校は、令和2年度と同一の教科書を採択することといたしました。

以上で、「令和3年度使用高槻市立義務教育諸学校教科用図書」は全て採択いたしました。

以上で、本日の日程がすべて終了いたしましたので、閉会といたします。

(午後5時34分閉会)