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生活保護基準引下げ処分取消等請求事件
提訴日
平成26年12月19日
当事者
原告/被控訴人 生活保護受給者51名
被告/控訴人 高槻市外14名
事案の概要
生活保護基準を引き下げた平成25年厚生労働省告示第174号、平成26年厚生労働省告示第136号及び平成27年厚生労働省告示第227号(以下「本件告示」という。)は、健康で文化的な最低限度の生活を侵害するものとして憲法第25条に反するものであるとともに、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第2条第1項、第9条、第11条及び第12条並びに生活保護法第1条、第3条及び第8条に違反するものであるとして、原告に対して行った同法第25条第2項による保護変更決定のうち本件告示に基づき金額を減額した部分の取消しを求めたものである。
争点
- 本件告示に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱またはその濫用があるといえるか。
- 国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償請求権が成立するか。
訴訟の経過
控訴審判決(令和5年4月14日)
結果【未確定】
第一審判決(市の敗訴)
【判決の要旨】
- 本件告示に係る厚生労働大臣の判断には、平成20年からの物価の下落を考慮し、消費者物価指数の下落率よりも著しく大きい下落率を元に改定率を設定した点において、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いており、したがって、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があり、裁量権の範囲の逸脱またはその濫用があり、違法である。
- 1.により、本件告示により減額された生活扶助の額に相当する額の支給を受けることになると考えられ、また、原告の精神的損害が回復されることも考慮すると、精神的苦痛が生じているとは認めがたく、国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償請求権は成立しない。
控訴審判決(市の勝訴)
【判決の要旨】
- 厚生労働大臣が、平成20年度以降の物価の下落の影響による国民の生活水準の急速な悪化に対し、収入の変わらない生活保護世帯の可処分所得の増加しているとして保護基準に反映させたことは、一定の合理性が認められ、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところがあるとはいえないから、判断の家庭及び手続における過誤、欠落があるとはいえず、したがって裁量権の範囲の逸脱またはその濫用があるとは認められない。
- 1.のとおり、本件改定に違法な点はないから、職務上の義務違反があるとは認められず、したがって国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償請求権は成立しない。