本市は、全国的にみて自転車の利用者が多いまちであり、自転車利用者の安全意識の問題などから、全交通事故に占める自転車事故の割合が高く、自転車対歩行者の交通事故件数も増加しており、他市においては重大事故により自転車利用者が高額な賠償などを命じられる事例も発生しています。
そこで、自転車の安全で快適な利用の環境に関する必要事項を審議するため、平成26年度に、「高槻市自転車利用環境検討委員会(附属機関)」を設置し、委員会での審議やパブリックコメントを経て、平成27年3月に条例を制定し、同年10月に施行しました。
なお、「大阪府自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」により、府内の自転車利用者等に対し自転車損害賠償保険等(他人の生命又は身体の被害に係るものに限る。)の加入が義務付けられたこと等に伴い、平成28年7月1日に条例を一部改正しました。
平成27年10月1日(施行)
平成28年7月1日(一部改正)
自転車の利用に関し、市、市民、自転車利用者等の責務を明らかにするとともに、歩行者、自転車利用者及び自動車等の運転者が安全かつ安心に通行できる道路環境を整備するための基本となる事項等を定めることにより、自転車利用者の意識の向上を図り、自転車の安全で快適な利用を促進する。
条例では、全ての年齢層でヘルメットの着用に努めるものとしています。現在、道路交通法では、保護者に対して、13歳未満の子どもへのヘルメット着用に努めるものとしています。しかし、自転車事故は全年齢で発生しており、自転車死亡事故での損傷部位は頭部が約60%を占めています。そのため、条例では年齢に関わりなくヘルメットを着用することを努力義務として定めています。
大人も子どももヘルメット
自転車事故による損傷部
出典:ITARDA資料より作成
(H24年11月)
条例では、自転車利用者は、自転車の利用に係る交通事故により他人に与えた損害の賠償を補償する保険又は共済(大阪府自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例第12条第1項に規定する自転車損害賠償保険等を除く。)に加入するよう努めるものとしています。
大人だけではなく、子どもが加害者になる事例においても高額の損害賠償を命ずる判決が相次いでいます。そのため、不測の事態に備え保険に加入することを努力義務として定めています。
表1 保険の種類
自転車保険の種類 | 保険の概要 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
個人賠償責任保険 | 自転車向け保険 | 自転車事故に備えた保険 | |||||
自動車保険の特約 | 自動車保険の特約で付帯した保険 | ||||||
火災保険の特約 | 火災保険の特約で付帯した保険 | ||||||
傷害保険の特約 | 傷害保険の特約で付帯した保険 | ||||||
共済 | 全労済、市民共済など | ||||||
団体保険 | 会社等の団体保険 | 団体の構成員向けの保険 | |||||
PTAの保険 | PTAや学校が窓口となる保険 | ||||||
TSマーク付帯保険 | 自転車の車体に付帯した保険 | ||||||
クレジットカードの付帯保険 | カード会員向けに付帯した保険 |
※ 自転車事故による損害賠償責任は「個人賠償責任保険」で補償されます。
※ TSマーク付帯保険は、自転車安全整備店で購入、点検、整備した自転車に貼られるTSマークに付帯した保険です。
表2 自転車での加害事故の事例
賠償額(※2) |
事故の概要 |
---|---|
9,521万円 |
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。( 神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決) |
9,266万円 |
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決) |
6,779万円 |
男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決) |
5,438万円 |
男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決) |
4,043万円 |
男子高校生が朝、赤信号で交差点の横断歩道を走行中、旋盤工(62歳)の男性が運転するオートバイと衝突。旋盤工は頭蓋内損傷で13日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成17(2005)年9月14日判決) |
※2:賠償額とは、判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(上記金額は概算額)。
出典:「一般財団法人 日本損害保険協会ホームページ掲載資料」より作成
歩道は本来、歩行者のための道であり、道路交通法上、自転車は原則として車道を通行しなければいけません。また、例外的に歩道を通行することができますが、その際は、歩道の車道寄りを徐行するなど、歩行者に配慮した運転をする必要があります。条例では、歩行者・自転車利用者双方の安全を図るため、車道の左側に設置されている歩道を、クルマと同じ方向へ通行するよう努めることを定めています。(図1参照)
※図1及び2は例外的に歩道を通行できる場合
歩道上で左側通行の自転車と右側通行(逆走)の自転車がすれ違うとき、右側通行の自転車が道を譲って車道に降りてしまうと「車道の逆走」となるだけでなく、クルマが走ってきた場合は急な飛び出しとなり、非常に危険です。また、 右側通行をすると、交差点で建物などの死角に入りやすくなります。そのため、交差点に進入しようとするクルマの運転者から発見されにくくなり、出会い頭事故の危険性が高まります。(図2参照)このように、自転車もクルマの進行方向と同方向に通行することによって事故を防止することを目的として、できる限り車道の左側に設置されている歩道を通行することを努力義務として定めています。
条例では、自転車の安全利用への理解と関心を深めるため、原則として毎月15日を「自転車安全利用の日」と定め、街頭指導をはじめ、安全利用を促す取組を行います。
条文 |
項目 |
内容 |
---|---|---|
1条 |
目的 |
自転車の利用に関し、市、市民、自転車利用者等の責務を明らかにすること等により、自転車利用者の意識の向上を図り、自転車の安全で快適な利用を促進する。 |
2条 |
定義 |
条例における用語の定義 |
3条 |
市の責務 |
市民等と連携を図り、自転車の安全な利用に関する施策を策定し実施するとともに、自転車の安全な利用に関する教育、啓発、情報提供等を行う。 |
4条 |
市民の責務 |
市民は、自転車の安全な利用について理解と関心を深め、自転車の安全な利用に努める。 |
5条 |
自転車利用者の責務 |
自転車利用者は、道路交通法その他の法令を遵守し、自転車の安全な利用に努める。 |
6条 |
自動車等の運転者の責務 |
自動車等の運転者は、歩行者、自転車及び自動車等が道路を安全に通行することができるよう十分配慮して自動車等を運転する。 |
7条 |
事業者の責務 |
事業者は、自転車を利用する従業者に対し、自転車の安全な利用に関する啓発を行うよう努める。 |
8条 |
自転車小売業者等の責務 |
自転車小売業者等は、自転車の販売等に当たっては、市が行う自転車の安全な利用に関する施策に協力するよう努める。 |
9条 |
保護者の責務 |
保護者は、その監護する18歳以下の子に対し、自転車の安全な利用に関する教育に努める。 |
10条 |
学校の長の責務 |
学校の長は、在学する児童、生徒又は学生に対し、自転車の安全な利用に関する教育に努める。 |
11条 |
計画の策定 |
市長は、自転車の安全な利用に関する施策を推進するための計画の策定等を行う。 |
12条 |
左側通行 |
自転車利用者は、自転車が歩道を通行することが認められる場合において、歩道を通行するときは、車道の左側にある歩道を自動車等の進行方向と同方向に通行するよう努める。 |
13条 |
乗車用ヘルメットの着用 |
自転車利用者は、乗車用ヘルメットを着用するよう努める。 |
14条 |
保険等の加入 |
自転車利用者は、自転車の利用に係る交通事故により他人に与えた損害の賠償を補償する保険又は共済(以下「保険等」という。)(大阪府自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例第12条第1項に規定する自転車損害賠償保険等を除く。)に加入するよう努める。また、自転車小売業者等は、自転車利用者等に対し、保険等への加入を勧奨するとともに、保険等に関する情報の提供に努める。 |
15条 |
指導 |
市長は、危険な運転をする自転車利用者に対し、自転車の安全な利用に関する指導を行うことができる。 |
16条 |
自転車安全利用の日 |
市長は、市民等の理解と関心を深めるため、自転車安全利用の日を設け、自転車の安全な利用に関する取組を行う。 |
条例の全文及び条例周知リーフレットについては下記PDFをご覧ください。
高槻市自転車安全利用条例リーフレット(PDF:182.1KB)
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